研究課題/領域番号 |
23520635
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
竹本 英代 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (50294484)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 宣教師 / 日本語 / 日本語学校 / 日米外交 |
研究概要 |
平成23年度は「日米外交政策における日語学校の創設の意義」を明らかにすることを目的としていた。そのためには、第一に、日露戦争前後の日米外交政策における来日宣教師の動向を明らかにすること、第二に、日本人キリスト者や政財界の人物を中心として創設された大日本平和協会の創設過程。第三に、来日したアメリカ人宣教師やアメリカ外交官を主体とする在日米人平和協会の創設過程を解明していく予定であった。 これらの研究には、アメリカ国務省記録からの資料収集が必要となる。日本国内では、関西大学や明治学院大学の図書館にアメリカ国務省記録のマイクロフィルムが一部所蔵されているため調査にあたった。しかし資料がマイクロフィルムのため判読しずらいことや、膨大な数の資料であったため、関連資料を見つけ出す作業に多くの時間がかかった。そのため、平成23年度は研究の内容について模索するにとどまり、上記の研究の意義を導きだすまでには到らなかった。 しかし、資料調査を行うなかで、来日した宣教師の関連資料が、日本各地の教会文書のなかにも存在することがわかってきた。宣教師の文書は、アメリカの各大学に所蔵されているコレクションの資料を調査することに専念してきたが、宣教師の携わった国内の教会文書や、教会史のなかにも残存していることがわかってきた。 また、日露戦争前後の日米外交史において、日本国内の研究ではアメリカ国務省記録を使用した研究が少ないことも判明してきた。本研究はとくに宣教師の動向に注目したものであるが、アメリカ国務省記録の資料を発掘していくことは、新たな日米外交史・関係史の史実を提示する取り組みであることがわかってきた。 平成23年度は、資料調査が中心となったため、論文や学会発表などで研究成果を公表することはできなかったが、今後の調査を進める上で、資料調査の範囲と特に重要な資料については明確になってきたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度はアメリカ調査を予定していたが、予算の確定時期が判断できず、調査時期を逸してしまった。加えて、関西大学と明治学院大学に所蔵されているアメリカ国務省記録の調査が、マイクロフィルムの解読のために予想以上に労力と時間がかかってしまった。 そのため平成23年度は、1900年代の日米外交政策と来日宣教師の動向を押さえることや、大日本平和協会や在日米人平和協会の創設意義を明らかにすることが目的であったが、主たる資料の調査が進まず、研究の構想を立てることや資料の解読でおわった。 当初はアメリカ国務省記録の調査対象時期を1900年から1920年までの20年間と設定していたが、範囲が広すぎたことに気づいた。1900年から1915年までの15年間に対象時期を絞り、資料の整理を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では、平成24年度は23年度に得られた成果をもとに、フレンド派宣教師の平和事業と日語学校の関連性を明らかにしていく計画であった。そして最終年度の25年度は、研究内容の確認ならびに、アメリカ平和運動と日語学校の関連性について解明していくことを予定していた。 しかし、23年度に調査を行ったアメリカ国務省記録の調査と解読は、マイクロフィルムのため、想像以上に時間がかかった。そのため、23年度の研究計画である日米外交政策における来日宣教師の動向と大日本平和協会、在日米人平和協会の創設の意義の分析はまだ途中段階である。 以上のことから、今後はまず23年度の資料調査を完成させていくことにする。合理的に調査を推進していくために、調査時期を1900年から15年間に絞り、日露戦争前後の時期に集中させて行っていきたい。本研究は日米外交政策を取り上げるため、アメリカ国務省記録の調査は必須である。まず平成24年度はアメリカ国務省記録の調査を中心に日米外交政策と日語学校の創設の関係を明らかにする。 その後、24年度の課題であったフレンド派宣教師の資料調査を開始したい。とくにハーバーフォード大学のクエーカー・コレクションが所蔵しているギルバート・ボールズの個人文書やフレンド派ミッションの年次総会記録、さらにスワースモア大学の平和文庫が所蔵するアメリカ平和協会資料が調査の対象となる。新たな資料の解釈と史実については、キリスト史学会で口頭発表し、研究成果については、『キリスト教社会問題研究』に投稿を経て、公表していきたい。また国内の学会に限らず、国際学会でも発表を行い、英語論文も作成していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度は国内調査に加えて、アメリカ国務省記録と英文雑誌記事の調査のためにアメリカの国立公文書館で調査を行う予定であった。しかしこれらの資料がマイクロフィルムであったため、関西大学と明治学院大学の図書館に所蔵されているアメリカ国務省記録の調査を行うだけで終わってしまった。23年度研究費の未使用額は、主にこの研究の進捗状況に伴って生じたものであり、当該未使用額については、以下の24年度研究計画の遂行に伴う研究費に充当する。 24年度は、今後の研究計画にしたがい、関西大学と明治学院大学の図書館でアメリカ国務省記録の調査を引き続き行う。また、23年度の調査により来日した宣教師の関係文書が日本各地の教会などに散在していることが判明した。各地の教会文書、図書館を中心に各地の資料も手広く調査し収集していきたい。そのための国内旅費が必要となる。国内の図書館に所蔵されている文献や図書を借用するための費用も合わせて使用する。 さらに、23年度に実現できなかったアメリカ調査を24年度は実施する。日本語学校の関係資料も必要となるため、関連資料を所蔵する諸機関で調査し、新しい資料の発掘を試みたい。また未入手のハーバーフォード大学のクエーカー・コレクション、スワースモア大学の平和文庫の資料調査を実施する。そのためには、文献複写、郵送料、マイクロフィルムからの印字にかかる費用も含まれる。また、資料調査の記録のためのデジタルカメラと研究実施上で常時必要な消耗品を計上した。研究成果については、国内の学会だけでなく、国際学会でも発表する予定である。そのための旅費や学会参加費が必要である。国際学会については、発表にともない、学会参加の際に事前に提出する要綱集や発表原稿、投稿論文の英文校閲のための謝金も必要となる。研究成果の公表のためには、論文別冊印刷費も使用する計画である。
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