研究課題/領域番号 |
23520639
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
畝田谷 桂子 鹿児島大学, 留学生センタ―, 教授 (20293384)
|
研究分担者 |
和田 礼子 鹿児島大学, 留学生センタ―, 准教授 (10336349)
|
キーワード | 理工系論文「考察」の表現意図 / 「結果と考察」章の談話構造 / 添削可能な文章 / スタンダードプロセス |
研究概要 |
平成25年度は、研究目的の一つである、教材作成につながる教育への示唆・応用について研究を行った。専門指導教員が添削可能な文章を、留学生が自立的に産出することを目指し、学生等が英語論文を推敲を経て作成する手法である「スタンダードプロセス」潮田(1999)という手法を日本語版に改訂して試用し、指導事例を報告・評価するとともに、事例の第一稿と最終稿を比較して、誤用を分類・分析した。その結果、以下が明らかになった。1)初稿で短文が創出され, 中国語母語学習者に散見される助詞相当語や複文のつながりの文法ミス等に起因する意味不明文がまったく創出されなかったため添削が容易であった。この手法が、添削可能な文章の自立的産出に一定の効果があると認められたため、学習者に本手法の使用を推奨することができる。2)誤用を潮田により「A.局所的問題」と「B.巨視的問題」に分類し、「A.局所的問題」は「a.語彙・文法」「b.文体」「c.表現意図による文型の知識」、「B.巨視的問題」は「a.論理構造を整えるための文順入替え」,「b.記述内容の要素の不足を補う文の追加」,「c.論理の流れを明確にするための接続詞の追加」に細分した。「A.局所的問題」の「a.語彙・文法」「b.文体」は、誤用しやすい注意点として誤用分類と例を学習者に示すことで、学習が効率化すると考えられる。また、「c. 表現意図による文型の知識」は、各章に出現する表現意図による文型検索を整えることにより、誤用を防ぐことができると考えられ、本研究課題の「考察」の表現意図の分析が資する。論理に関わる重い誤用である「B.巨視的問題」の「a.論理構造を整えるための文順入替え」は、誤用例を収集し、類型モデル化して学習者に提示すると教育上効果があると考えられる。 潮田資勝(1999).「2章英語論文を書く」『科学英語論文のすべて』日本物理学会編丸善:27-85
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の計画は、以下のとおりであった。 1)平成23-25年度の分析結果の整理。 2)日本語理工系論文「結果および考察」章全文のコーパス完成。 3)英語論文の分析。a. 資料論文「結果および考察」章全文に論文執筆者の表現意図を付与。 b. 論文執筆者の「考察」を表す表現意図に下位項目を立てて細分。 c.「結果と考察」章の談話構造を記述。d.「考察」を細分した下位項目の種々の表現意図に現れた文を、表現意図別文型として整理。 4)日本語論文と英訳論文の対照比較。a.「考察」下位項目の表現意図に関わる論理展開の型を対照。 b. 「結果および考察」章全文の談話構造を対照。5)教材として役立つ項目を整理する。 6)研究成果報告書を作成する。 このうち、1)、2)、5)についてはほぼ達成できた。 3)の英語論文は現在分析中であり、時間をかけた丁寧な分析があってはじめて、4)の比較が可能になるため、達成度評価を「おおむね順調である」にした。また、6)は最終年度の課題である。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度の計画は、以下のとおりである。 1)平成23-26年度の分析結果の整理。 2)日本語理工系論文「結果および考察」章全文のコーパス整備。 3)英語論文の分析。a. 資料論文「結果および考察」章全文に論文執筆者の表現意図を付与。 b. 論文執筆者の「考察」を表す表現意図に下位項目を立てて細分。 c.「結果と考察」章の談話構造を記述。d.「考察」を細分した下位項目の種々の表現意図に現れた文を、表現意図別文型として整理。 4)日本語論文と英訳論文の対照比較。a.「考察」下位項目の表現意図に関わる論理展開の型を対照。 b. 「結果および考察」章全文の談話構造を対照。 5)研究成果報告書を作成する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度から新たに学長補佐に任命され、管理・運営エフォートが急増し、当初計画していた研究エフオートを減じざるを得ない状況が生じた。そのため、平成25年度に計画していた英文論文の分析に十分当たれなかった。さらに、平成25年度に参加を予定していた国際学会である「日本語教育国際研究大会」が開催されなかったことによる。 平成25年度に開催されなかった国際学会が、平成26年度に、世界日本語教育大会(オーストラリア、シドニー工科大学)として開催されるため、学会参加経費として未使用額を充当する。また、平成25年度の研究成果である「教育への示唆」に関して日本語教育学会で発表するための経費、必要であれば追加のデータ処理経費、および最終研究報告書作成経費として充当する予定である。
|