研究課題/領域番号 |
23520653
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 志のぶ 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (30275507)
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キーワード | 議論の構造 |
研究概要 |
本研究の目的は、申請者のこれまでの研究「モノログの議論研究」で得られた方法と理論モデルを、コンピュータを介した相互作用的コミュニケーションに適用し、オンライン上の議論の構造を規定する要因や、それら議論の影響・効果を測定・分析・評価して、オンライン・コミュニケーションの肯定的利用範囲と利用形態の提言を行い、より良い社会的合意形成を手助けすることである。平成25年度は平成24年度までの、調査の設計のための調査に基づき、二回にわたってオンラインでのデータ収集を行った。平成26年度はこれらのデータの分析を進める予定である。 オンラインでのデータ収集は、(1)調査の主旨の説明と倫理上の約束事を確認、(2)参加に同意した回答者に対して、価値観に関わる一つの問題を提示、(3)その問題ついての回答者の基本的立場と自分の取る立場に対する自信、回答者の議論志向度を尋ね、(4)架空の参加者4名の異なる議論を提示、(5)それら議論の質を評価、(5)回答者自身の議論を構築、そして(6)再度、この問題についての立場と自信の程度を尋ねて終わった。理論的に焦点となるのは次の点である。(a) 個人が有する議論に関わる特性や、与えられた問題に関するその個人の立場が、他の参加者の議論の質の評価や、自分の構築する議論の質にどう影響するか、そして、(b)それらの結果が、最終的には個人の考え方や自信の変化など、目に見える変化として現れるのか。これらの疑問に答えることで、モノログを越えた相互作用的なオンライン議論が参加者に与える影響を探り、地理的な制約をこえた合意形成の有効な道具として、近年期待が高まりつつあるオンライン議論のあるべき形態を知ることができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度は有る程度満足できるものである。全体の研究期間のうち、平成23年度~平成24年度には、調査・実験の設計、文献調査と最近の学術動向の調査を行った。その結果により、今後なされるべき実験・調査の方向が明確になり、考慮すべき理論的枠組みがどのようなものか判明した。そして、研究期間4年間の後半となる平成25年度には調査の実施にこぎつけることができたからである。具体的には、調査項目を決め、実験・調査の手順を決め、二度にわたって、オンラインでの調査・実験を実施、データ収集を行った。調査・実験を通して明らかにしようとしたのは大きく分けて次の3点である。(1)議論がモノログではなく、相互作用的なオンライン上の議論を想定した場でのインターアクティブな議論である場合、個人の構築する議論の形は他の参加者の議論の特徴や性質にどのように影響されるのか、(2)個人の持つ特質や興味などが、他の参加者の議論の受け止め方や評価にどのように影響するのか、(3)オンラインで参加者間の議論を行った結果、提示された問題について個人の考えや、自分の考えに対して持つ自信の程度はどのような条件下で、どのように変化するのか。
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今後の研究の推進方策 |
今後は最終年度となる平成26年度に、調査の結果を分析し、理論的な枠組みに照らし合わせながら、得られた結果の考察を行う。具体的には、まず、収集したデータの整理、データの一部のコーディング作業を行う。次に、理論的な枠組みから導きだされた仮説検証が可能となるように、統計処理を行う。これらを通じて、この研究が明らかにしようとした疑問に対する答えを出し、オンライン議論の理想的なあり方を探るとともに、オンライン議論を生産的な議論の場とするための方策を検討する。
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