本研究は、学術的な英語と高校までの教育で扱われている英語とのギャップの橋渡しとなるような英語表現に関する知見を得て、その学習に役立つオンライン教材を開発することを目的とし、そのために英語圏の小学校~高校の学校教材の英文を集めた「プレ・アカデミック英語コーパス」を作成し、特に動詞を含む表現について調査し、一般的な大学生が習得していないと考えられるものを特定してきた。そのような表現は学生の習得状況からいくつかの種類に分類することができる。例えば“The northern hemisphere is tilted toward the sun.”の tilted のように単語自体になじみがないもの、“Plants give off oxygen.”の give off のように個々の語は知っているが組み合わせの意味(本例では句動詞)が未習のもの、”Some trains are powered by electricity.” の powered のように、動詞以外の品詞(本例では名詞)の用法のみ習得しているもの、などである。 本年度の主な成果は英語表現の学習を支援するWebシステムを開発したことである。例えば、上述したいくつかの動詞のコロケーションを習得するには該当する部分の語句のみを覚えるだけでは不十分であり、一文が組み立てられるようになる必要がある。しかし長期記憶として例文を完全に暗記するのは非常に苦痛を感じる学習法でもある。そこで例文を画面に提示して学習者に短期記憶としてインプットし、直後に例文を見せずに再現させるという動作を繰り返す英文再現力養成システムSmileを開発した。著作権の問題がない例文が整備出来次第、まず少人数の学習希望者を募って試験運用を開始するとともに、論文や英語オンライン授業の教材としてなど、他の形態でも本研究の成果を公表・活用していく予定である。
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