研究課題/領域番号 |
23520658
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
野呂 徳治 弘前大学, 教育学部, 准教授 (90344580)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | コミュニケーション不安 / ストレス / オーラルコミュニケーション / 英語 / 第二言語習得 |
研究概要 |
本研究は,第二言語(外国語)としての英語によるオーラルコミュニケーション遂行時において,学習者の情意的要因と認知的要因の相互作用がどのような影響を与えるのか,また,その影響はどのようなメカニズムにより生起するのかを心理的ストレス理論を援用して明らかにすることを目的とするものである。 研究初年度である平成23年度は,オーラルコミュニケーション遂行に影響を与えていると考えられている情意的要因の一つであるコミュニケーション不安の具体的な影響とその規定要因の特定に取り組んだ。日本人大学生6名を被験者として,英語スピーチ課題を用いたコミュニケーション不安誘発実験を行い,彼らの英語発話を分析すると共に,彼らが経験した心理的ストレスを測定し,さらに,自分の課題遂行状況を遡及的に内省し,それを自由記述法により報告させ,その内容分析を行った。その結果,ストレスの影響として最も顕著なものは,強い不安を感じている被験者については,「知っていたはずの単語・表現が想起できない」,「話そうと思っていた内容を想起できない」であった。英語発話分析の結果から,不安をあまり感じていない被験者は,単語・表現が想起できない場合はスピーチのパターンを変えたりするなど,談話構造の計画において柔軟さがみられるのに対して,強い不安を感じている被験者の場合,最初に計画した談話構造を変えることができないまま想起できない単語・表現をいつまでも追い求める傾向がみられた。さらに,被験者の課題遂行に対する要求水準が高い場合並びに自意識が強い場合,より強い不安を感じている傾向がみられ,これらがコミュニケーション不安の規定要因となっている可能性が示唆された。 これらの知見は,コミュニケーション不安を心理的ストレス理論に基づいて「コミュニケーションストレス」として概念構成するにあたっての有益な基礎資料となることが期待されるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では,研究初年度に,コミュニケーション不安を現在進行中の言語使用場面でリアルタイムでとらえるために,日本人英語学習者を対象に英語によるオーラルコミュニケーション遂行時に彼らが経験した困難及び心理的ストレスについて質問紙調査を行い,心理的ストレス理論に基づいてその構成要素並びに先行条件及び規定要因を洗い出し,「コミュニケーションストレス」としてその概念構成を行う予定であった。しかし,概念構成の基礎データ収集のために必要な調査協力者数が当初の見込みを下回り,基礎データが不十分であったため,「コミュニケーションストレス」の概念構成の進捗状況が予定よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目にあたる平成24年度においては,「コミュニケーションストレス」の概念構成の基礎データ収集のために十分な数の調査協力者を募り,彼らを対象に心理的ストレス尺度を用いてオーラルコミュニケーション遂行時のストレスを測定すると共に,質問紙調査を実施して,ストレスの影響とその生起のメカニズムを説明する仮設モデルの構築に取り組む。 さらに,特に強いストレスを感じていると考えられる調査協力者を対象に,英語によるインタビューテストを実施し,「コミュニケーションストレス」が彼らのオーラルコミュニケーション遂行時にどのような阻害的効果をもたらしているかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究初年度である平成23年度は,心理的ストレスの測定並びに質問紙調査のデータ分析を実施する予定であったため,そのために必要となる標準化された心理的トレス尺度及び統計分析ソフトウェアを購入する予定であったが,調査協力者数が十分でなかったため実施することができなかった。したがって,その予算を次年度に繰り越して,次年度請求予定の物品費と合算して予算を組み直して購入する予定である。 また,平成23年度に実施した英語スピーチ課題を用いたコミュニケーション不安誘発実験では当初予定していた英語の母語話者の参加は求めず,日本人だけで行ったため,英語母語話者分の人件費・謝金の予算は執行しなかった。これについても,予算を次年度に繰り越し,次年度請求予定の人件費・謝金と合算して,インタビューテストのテスト用具の開発・作成並びに実施のための経費にあてる予定である。
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