研究課題/領域番号 |
23520662
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
久保田 章 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30205132)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ライティング / シラバス / タスク / 中高連携 / 国際情報交流 |
研究概要 |
23年度の主な目的は(1)ライティング関係の参考文献や資料の収集を行うこと、(2)英国のライティング、シラバス開発、語彙等の研究者と交流し、研究方法やその妥当性などについて情報交換すること、(3)高校の英語教科書のライティング関係のタスクを分析することの3点であった。はじめの2点については、計画以上の成果があった。特に23年9月から11月までオックスフォード大学に出張し、日本では入手しにくい文献の収集を行った。また同大学のマカロ博士、バンダープランク博士、チャールズ博士、ユルバ博士、メイソン講師ら、応用言語学部の研究者たちと面談を実施したり、セミナーに参加して、第二言語習得、教材開発、ライティングの理論と実践指導、コーパス言語学等、様々な観点から新しい知見や情報を得ることができた。同様に、ライティングのシラバス開発と適切な研究方法について議論した。さらには、シェフィールド大学のマルデリック博士、ホッブス博士、アフィツカ博士、ムーア博士、リン博士等とも面談する機会を得て、談話分析、シラバス開発、コーパス言語学、国際英語、社会言語学等に関して情報の収集と交換を行った。第3点については、2008年度版の高校英語I、IIの教科書からライティング・タスクを抽出し、Robinson(2001他)のTriadic Componential Frameworkを用いて、「タスクの複雑さ、難しさ、条件」という3つの観点からそれぞれのタスクを分析・分類した。また、メインのライティング活動(自由英作文)と、そのプレライティングとポストライティングの活動を中心に、複数のライティング・タスクの間の認知的関連性について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
23年度には高校の英語IとIIだけでなく、ライティングの教科書についてもタスクの抽出と分析を行う予定であったが、時間の関係で実現できなかった。また、抽出したライティング・タスクの分類や分析に関する評価者間の信頼性を確保する課題が残った。
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今後の研究の推進方策 |
24年度には23年度に実施できなかった現行の高校ライティングの教科書のタスクの分析を行う。また、新学習指導要領に準拠した中学校の教科書が発売されるので、関連するデジタル形式の資料の収集と分析を行う。23年度と同様、ライティング関係のタスクの抽出とRobinsonの認知的枠組みを用いた各タスクの特性とタスク間の関係についての分析を実施する。 さらには、中学校において、理論的に妥当と予測されるライティングのタスク構成と配列状況の効果を調査する。参加者の作文を分析し、そのデータをWolf-Quintero, Inagaki, & Kim(1998)などで採用されている、作文の正確さ、流暢さ、複雑さに関する客観的評価指標によって分析し、比較する。 同様に25年度には新しい高校の教科書についての分析と高校生に対する複数ライティングタスクの配列とその効果について調査を実施する。3年間のデータ分析の結果をまとめ、教科書のライティング・タスクの構成と配列様式の適切性について考察し、中学校と高校におけるライティングのシラバス開発のための枠組みを提言する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額として22,976円が生じたのは、科研費で購入する予定であった同額の研究資料(書籍)を、手続き上、最終的に大学の一般研究費から支出することになったためである。当該分は、高校のライティングの教科書13冊とそれに関するデジタル資料などを購入するための費用約20万円に充当する。また、中学校の新しい教科書15冊および関連する資料の収集に約25万円を、データの入力や修正、指標の算出などの作業を短期雇用者に依頼するための費用として約10万円を計上する予定である。 タスクの分類と複数タスクの関係の検討に関しては、研究協力者に依頼して評価者間の信頼性を確保する。 また、B. North博士 (スイス ユーロセンター) と面談し、ライティングの能力推定基準の設定方法について意見を求めるため、旅費として約37万円を予定している。North博士との日程調整が予定通りいかない場合には、L. Hamp-Lyons博士(イギリス、ノッティンガム大学)または、C. Elder博士(オーストラリア、メルボルン大学)他、ライティング能力の測定と評価が専門の研究者との面談を計画する。
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