研究課題/領域番号 |
23520666
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
古家 貴雄 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30238696)
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キーワード | 教員養成システム / アメリカ合衆国 |
研究概要 |
戦前の中等学校の英語教員の養成の状況について明らかにすることが本研究の主目的であるが、明治、大正、昭和戦争前の英語教員の供給のルートの研究、高等師範学校による英語教授法の教授状況、具体的には担当者や教育内容、さらには、附属学校での教育実習の状況などがある程度明らかになって来た。その成果をまずは昨年6月の中部地区英語教育学会で発表し、当学会の紀要に掲載した。また、11月に日本教科教育学会でも実習について発表を行った。また、英語教員供給ルートの状況を山梨大学の紀要に掲載し、教授法の担当者の詳細について山梨大学の教育実践総合センターの紀要に発表出来た。合計2本の論文を発表出来た。結論として、戦前の英語の教員養成の供給ルートとしては、無試験検定によるものが多く、私立の専門学校の養成による英語の教員の供給が多いことがわかった。また、英語の場合は無資格で欧米に暮らした者が教師に採用されているケースも多かった。教授法や実習を受けて、教師のプロの養成を受けていた者は高等師範学校の卒業生のみで、特に教育実習によって実践的力量が形成されていたようだ。東京高等師範学校においては、音声を中心とした英語教育が行われており、授業はほとんど英語で行われていた。そして、そこに送り込まれた高等師範学校の学生たちは、当然、オーラルで英語の授業をさせられることになった。そのような教育方針は岡倉由三郎の影響が大であるが、当時日本に来ていたハロルド・E・パーマーの教授法の影響もあったようだ。いずれにしても、そうした力量形成が行われた結果、福島や湘南でその後音声中心の先進的英語教育が行われることになった。以上の研究をまとめた報告書を25年3月に発刊することが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4つの研究目的の内、戦前の英語の教員養成の状況の解明にはある程度の目処は立った。現在は、2つ目の英語の教員養成に関する欧米の理論について、その研究を行っている。具体的には教員のプロフェッショナリズムとリベラリズムの教師間の研究である。3、4つ目の戦後の英語教員養成の問題点、それと学校現場が教員養成大学(養成機関)から送られてくる学生にどのような教師的素養や資質の育成を求めているかの研究についてはまだ進んでいない。理由は戦前の英語教員の養成状況の解明に時間が予想以上にかかったからである。今年は最終年度なので、3つ目と4つ目の研究目的について、さらに研究を進めたい。4つ目の研究目的については現場へのアンケートも実施してゆきたい。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、研究目的の2つ目の英語の教員養成における理論的基盤に関する研究のまとめを行いたい。具体的には欧米における教員養成システムにおける理論基盤を明らかにする。その上で、その理論基盤が日本のシステムにどのような影響を与えたかを明らかにする。次に、3つ目の目的の日本の戦後の英語教員養成の問題点について文献的、あるいはまた、国立、私立大学の英語科教育の担当者にインタビューを行いながら、その概略を把握するようにする。そして、最後に現場が教員養成機関に期待する英語教員の資質、能力の問題を主にアンケート調査などにより明らかにする。そして最終的に、本研究のまとめとして、今後の大学での英語の教員養成に関して具体的な提案をいくつかしたいと考える。それを持って研究の総括としたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度繰り越した端数の金額は、来年度支給の研究費と合わせて、研究に必要な図書の購入や関係学会への旅費などの費用に充てたい。
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