本研究の目的は、戦前から戦後にかけての英語の教員養成の状況を歴史的に辿ること、また、戦前と戦後の教員養成の接続関係を調べ、現在の教員養成システムの問題点への示唆を提案することなどである。最終年度は、これまでの英語の教員養成の歴史研究を踏まえて、戦後の英語の教員養成の問題点の改善を提案していくことを主眼とした。まず、戦前の日本とアメリカの教員養成に関する文献を収集し、歴史研究を深めることができた。アメリカでは、2種類の教師像であるリベラリズムとプロフェッショナリズムについて、コモンスクールの登場によって、これらの2つの像が融合する方向に進んだ。しかしながら、日本では、戦前はリベラリズムの教師像が優勢で、プロフェッショナリズムの教師養成を重視したのは、中等学校教員養成における4つの高等師範学校のみであった。特に英語のケースでは、東京と広島の高等師範学校がそれで、そこでは、現代の大学の教員養成システム、例えば、実習に関する養成システムと比較してもそん色のない養成レベルを保っていたことが明らかになった。また、特に東京高等師範学校附属中学校では英語だけで授業を行う洋式が大勢で、実習生もオールイングリッシュの授業を強制されていた。これにより、戦後、オーラルの授業を中心とした英語教育を行った湘南プランや福島プランの指導者を多数輩出することになった。ところが戦後、中学校が義務制になり、中学校の教員養成も遅れたことから、大勢としては、訳読式中心の英語教育に戻ってしまった。現在の英語教育、特に高等学校では授業においてオーラルのみの授業が指導要領で提示されている。戦前の高等師範学校での特に英語の教育実習の訓練のタイプが現代の教員養成に非常に示唆的であることが科研の研究を通じて明らかにすることが出来た。
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