研究課題/領域番号 |
23520667
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
奥村 圭子 山梨大学, 総合研究部, 教授 (10377608)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 異文化適応 / 異文化コミュニケーション / 短期交換留学 / 受入れ・派遣 / PAC分析 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、グローバル人材の育成をめざし推進している短期交換留学制度を通して海外の交流協定大学へ派遣された学生とそれらの協定大学から日本へ派遣された留学生の異文化適応を、異文化間心理学、言語教育の両面から考察するものである。研究の目的は、1)彼らの異文化適応において重要な要素は何か、2)彼らの新しい異文化への適応プロセスはいかなるものか、3)交換留学生間に何らかの共通する適応プロセス・パターンがあるか、4)彼らにとっての留学の意義はどのように変化しているか、を調査・研究することである。認知構造分析の手法である内藤(2002)のPAC(Personal Attitude Construct)分析を2011年度から、留学の初期段階(PAC-A)、留学半ば(PAC-B)、そして留学直後(PAC-C)に実施し、認知面、情動面、そして態度・行動面から調査、考察を行っている。それに加え、留学後2年から3年(PAC-D)の段階の調査を可能な範囲で実施し、改めて留学の意味、意義を問い、彼らにとっての留学像を炙り出すことにより、今後の留学前の予備教育の指導や留学を促進する出版物などに生かす考えである。
2014年度は、分析に応用できる異文化適応とその適応能力についての先行研究から様々な理論的なフレームワークを学んだ。加えて派遣学生から出されるダイアリー的な記述の分析方法に関する助言を英国の研究者から得、PAC分析からの結果を補完する分析を行っている。一方、データ収集に関しては、2013・14年度の派遣・受入れ生のPAC-A、B、Cを継続的に行うと同時に、2011・2年度の受入れ生のPAC-Dを一部実施し、彼らにとっての留学の意義を改めて問うことができた。また、今後Skypeでの遠隔インタビューに備え、PAC分析支援ソフトのマニュアルを元にその英語版を作るべくソフトの開発者と検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由により(2)と判定される。 1)データ収集については、PAC-Dを除いてほぼ終了しており、PAC-Dについては可能な限り継続、分析する予定である。今後2014年度収集した新たなデータの書きおこし作業を進めなければならない。 2)いくつかのケーススタディーをまとめることができた。 3)先行文献や分析方法について、英国の研究者の助言を受けることにより、新たな視点からの分析が可能となった点は評価される。現在分析を進めつつある。 4)英国の大学において研究チームに属し、そのメンバーから研究者として沿うべき研究倫理のガイドラインや調査協力者に対する倫理的配慮についての指導を継続的に細かく受ける貴重な機会を得た。 5)インフォーマルな研究会での発表は2回行ったものの、関連学会での発表は行っていないが、2015年度に向けて準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
1)収集分析データ(PAC-A、B、C)の考察を継続して行うが、全員の段階ごとの傾向と調査協力者ごとのパターンを見ていく。 2)PAC-Dを可能な限り、実施する。 3)データ分析の結果を理論的なフレームワークと比較、新たなモデルの提案を行う。 4)研究の成果を学会や学会誌で順次発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度後期に英国Warwick大学Centre for Applied Linguisticsにおいて研究を進める中で異文化間コミュニケーション分野の英国人研究者から分析段階に関し新しい視点からの助言を得、現在更なる文献収集と分析に取り組んでいる。その間、経費の未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の事情により、PAC-CとDの遂行とデータ分析の継続、そして学会やシンポジウム等での発表を行うこととし、未使用額をその経費に充てることとしたい。
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