研究課題/領域番号 |
23520682
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
吉重 美紀 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 准教授 (80156265)
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研究分担者 |
樋口 晶彦 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (20189765)
榮樂 洋光 鹿屋体育大学, スポーツ・武道実践科学系, 助教 (50546760)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ESP / アスリート / 海外遠征 |
研究概要 |
本研究の目的は、ESP教育、特に体育学やスポーツを専攻する大学生の英語教育の一環として、オリンピックなど国際大会や海外遠征に出かけるトップアスリートが、海外で英語のコミュニケーションが必要になった場合に問題なく英語でコミュニケーションがとれるよう、海外渡航前や滞在中に自律的に英語学習のできる英語学習支援ソフトを開発することである。今年度はアスリートが海外遠征に出た時、特に英語が必要となる場面等について、本学で海外遠征の多い自転車、ヨット2競技のアスリート/選手と監督・コーチに<アスリートの海外遠征と英語の使用に関するアンケート>調査を実施した。 調査から、本学の自転車、ヨット部選手の英語の必要性は9割と高いことが明らかとなった。また競技で使う「専門英語」、日常で使う「一般英語」そして「基礎的な英語」では、「競技専門英語」(62%)よりも「一般英語」(72%)「基礎英語」(72%)の必要性が高かった。特に英語を必要とする場面は、ヨットでは「プロテスト(レジスト、抗議)」(63%)、「生活時のコミュニケーション」(50%)、移動時の「入国手続き」(38%)と、大会時のプロテストで特に英語を必要とする一方、生活時のコミュニケーションでも英語を必要とする事がわかった。 自転車では、移動時の「道を尋ねる」(40%)、大会時「レース中」(36%)、移動時の「交通手段―運賃・乗り降り・時刻・行き先等―」(28%)、「入国手続き」(28%)、生活時の「食事」(28%)という結果で、「移動時」の英語を最も必要とする事がわかった。 ESP研究において、スポーツに関する研究は他にほとんどなく、この調査結果は意義深いものと思われる。また予定した本学アスリートのみならず、ユニバーシアード大会や室内自転車競技国際大会など学外のアスリートにも調査を実施できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画にしたがい、さらに3ヶ月毎の研究計画を作成し、研究分担者と打ち合わせの会議を持ちながら研究を進めてきたので、おおむね順調に進展している。実施計画では、初年度に各競技に特有の語彙、表現等を文字データとして抽出する予定であったが、アスリートが海外遠征に出た時、頻繁に出会う可能性の高い場面を調査するのが先だと判断しアンケート調査を実施した。各競技特有の語彙、表現等については、調査と並行して各競技の競技規則集と大会要項等を集めている。但し、予定した3競技種目のうち今年度国際大会が開催されなかった剣道については、今年度の調査を見送ることとした。また本学アスリートのみならず、学外のトップアスリートも対象にアンケート調査を実施することができたので、今後の教材開発に向けより客観的な調査になったと思われる。 またドイツウルムで開催された第3回ESP学会では、ドイツを含むヨーロッパのESP研究の動向や教材開発の現状を知ることができた。ドイツで出版されるESP教材はほとんどCEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)にしたがってA1,A2,B1,B2のレベル別になっていたが、今後の教材作成の参考としたい。 上述のように、アスリートに対する調査を実施しデータを分析する一方、海外の関連学会に参加して教材開発の資料を収集できたので、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた調査結果を基に、平成24年度は各競技の海外渡航に同行し(同行できない場合録画を依頼し)、アスリートが英語を必要とすると回答した各場面の具体的なコミュニケーション場面をビデオに録画する予定である。幸い平成24年4月中旬より研究分担者がロンドンオリンピック前のアスリート(ヨット)の指導にヨーロッパおよびロンドンへ出かけたので、既にヨットの録画は依頼している。また本学からオリンピック自転車競技に女子選手の出場が決まったので、この選手を主に自転車の海外遠征の同行・録画を実施したい。今年度は、トップアスリートの海外遠征の映像データを収集する一方、各場面に必要と思われる語彙・表現のリストを作成する予定である。なお、昨年度実施できなかった剣道部対象のアンケート調査は、できれば国際大会出場者を主に実施したい。 変更予定として、今年本学が筑波大学との連携を進めているので、筑波大の3競技の選手対象のアンケート調査やインタビューの実施も可能なら考えていきたい。 最終年度の教材開発に向け、今年度は映像データ、文字データと、アスリートが将来英語教材として使用可能な具体的資料を集めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は、申請書に書いたように映像の録画および資料収集のためアスリートの海外試合同行の旅費に主に使用される予定である。申請時の計画では、自転車競技はアジア大会を予定していたが、本学学生のオリンピック出場が決定したので(ヨットも可能性があるが未定)ロンドンオリンピックの録画や資料を収集したい。また剣道はイタリアで世界大会が開催されるため、本学から教員(研究協力者)が参加する場合は同行したい。昨年度は国内の国際大会(鹿児島市で開催の)には参加したが、海外の大会に参加した経験がないので、少なくとも3競技の2つは選手に同行して実際アスリートと英語の接触場面を見てみたいと考える。昨年度使用しなかった研究費もこの海外旅費として使用したい。 旅費以外では、文字データの収集・入力等の研究補助の謝金と、3競技の関連図書およびスポーツの国際試合等に関する英文図書購入にあてる予定である。
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