研究課題/領域番号 |
23520685
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
広瀬 恵子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (40145719)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ピアフィードバック / ライティング / 英作文指導 / 英語 |
研究概要 |
本研究は、ピアフィードバックを用いた効果的な英語ライティング指導を行うための基礎研究である。本年度は、学習者がピアフィードバックを継続的に経験することにより、英語ライティング力、英語ライティングに対する態度、動機づけが変わるのかどうかを調べた。具体的には、大学半期の4クラスのライティング授業で収集した、全4群の日本人大学生が学期前後に同条件下で書いた英作文を、全て電子データ化し、外部の英語教師に採点をしてもらい評価作業を終了した。 平成23年度は、4群中2群の学生が指導前後に書いた英作文の量(総語数)と質(評価点)を比較するとともに、英語ライティングに対する態度、動機づけの変化をアンケート調査結果に基づいて分析した。この結果、以下のことが明らかになった。(1)両群とも、指導後書いた英作文は総語数が増加し、全体的な質(評価点)も上昇した。(2)内1群が書いた指導後英作文は、指導前英作文と比べて総語数が有意に上昇した。(3)英作文の質に関しては、両群とも指導前後で有意差はみられなかった。(4)両群がピアフィードバックを肯定的にとらえた一方で、ピアの作文を読んでフィードバックを書くことに対する態度が群によって有意に異なり、書いたフィードバックの量も2群間に有意差がみられた。(5)両群とも指導後英語ライティングに自信を持つまでには至らなかった一方で、ライティングに対する抵抗感を下げた。これらの結果により、ピアフィードバックは日本人英語学習者に乏しいとされる英語で書くことに対する意欲を高め、ライティング力向上にも貢献する可能性が示された。一方で、ピアフィードバックのどのような点が学習者のライティングへの態度・動機づけに変化をもたらすのか、さらに、どのような点で英作文に向上がみられるのかについては、今後の課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度に既に分析を終えた研究結果を関係学会で口頭発表し(2件)、論文を執筆後査読付き国際学術誌に投稿した(2編)。そのうち1編の論文については、査読結果に基づき修正・書き直しが必要となった。この作業により、本研究に関わる新しい研究課題が明らかになり、修正に予定したより日数を要したため、当初の研究遂行計画を変更せざるを得ない必要が生じた。 交付申請書にあげた3つの研究目的のうち1つ目の「学習者がピアフィードバックを経験することにより、英語ライティング力、英語ライティングに対する態度、動機づけが変わるのかを調べるために、これらの測定方法を調査・開発する」に関して、現在学習者の英語ライティング力がどのように変わるかを、英作文データに基づき分析中である。具体的には、ライティング指導で使用可能なライティング力発達指標を探すために、指導前後に書かれた英作文を、語、文、節、T-units、S-nodesの数及び文、節、T-unitsの長さ(語数)、T-unitあたりのS-nodes数の点から比較している。学習者の英語ライティングに対する態度、動機づけの変化を調べるための測定方法については、素案を基に検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はまず、既に収集済みのデータ(指導前後に2群の同一学習者が書いた英作文)を基に、英語学習者の英語ライティング力の発達指標になりうる指標を実証的に探り出す分析を終える。その上で、その指標を使って、既に収集済みの別の2群が指導前後に書いた英作文の分析を行い、探り出した英語ライティング力の発達指標の有効性を検証する。これらの分析は、計画当初は平成23年度に予定していたが実施できなかった。このため平成23年度の研究費に未使用額が発生し、平成24年度に繰り越した。この研究結果を、関連学会で口頭発表し、論文にする予定である。 次に、平成24年度の研究計画を実行にうつす。学習者がピアの英作文を読んで書いたピアフィードバックの内容分析を行う。この分析結果を基に、ピアフィードバックを用いる際の教師の役割を考察した上で、英語ライティング指導方法・手順を決定する予定である。あわせて、学習者の英語ライティングに対する態度、動機づけがどう変化するのか調べるために、アンケート質問紙調査項目を決める。その上で、研究協力者の授業で、試行的にピアフィードバックを用いたライティング指導を継続して行ってもらい、学習者が書いた英作文を収集するだけではなく、開発した質問紙を用いたアンケート調査を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究結果から導き出した評価尺度を用いて、24年度に収集した英作文を分析・評価する。さらに、ライティングに関する学習者の動機づけに関わる質問紙調査結果を分析する。これらの分析は、計画当初は平成24年度に行う予定であったが、25年度に持ち越した。この理由により、平成25年度交付予定額の変更を願い出た。これらの研究結果を関係学会で口頭発表し、論文を完成させる予定である。 本研究の全体的な総括を行い、研究結果を考察し、ピアフィードバックを用いた英語ライティング指導のあり方と、ライティング力発達指標及びのライティングに関する学習者の動機づけの測定方法の信頼性・妥当性をさらに検討する。これらの研究成果を国内外の関係する学会で発表する予定である。
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