研究課題/領域番号 |
23520685
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
広瀬 恵子 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (40145719)
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キーワード | ピアフィードバック / ライティング / 英作文指導 / 英語 |
研究概要 |
本研究は、ピアフィードバックを用いた効果的な英語ライティング指導を行うための基礎研究である。大学の半期の授業でピアフィードバックを経験した4クラス4群(合計69名)の日本人大学生が指導前・後に同条件下で書いた英作文(合計138編)を複数の外部評価者に採点してもらった結果を基に、平成24年度は、指導前・後の英作文の量(総語数)と質(全体評価点)それぞれを比較した。その結果、指導後全体的に作文の総単語数が増え、統計的な比較分析の結果、4群の内3群において評価点が有意に向上したことがわかった。残りの1群においても指導後の作文評価点が高い傾向がみられた。このように、ピアフィードバックを用いた英語ライティング指導は、大学生の英語ライティング向上に、質及び量の両面で貢献する可能性が示された。この結果を受けて、指導前・後に書かれた英作文を、単語、文、節、T-units、S-nodes それぞれの総数及び文、節、T-unit 当たりの語数及び S-nodes 数、この他、語彙の多様性 (type-token ratios)等の尺度を用いて、分析を開始し現在も作業中である。分析終了後は、指導前・後の英作文をこれらの点からそれぞれ比較する。この分析及び比較は、本研究の大きな目的の1つである英語ライティング力発達指標を探り出す目的で行っている。この比較分析により、比較的短期間(1学期、1年間)の英語ライティング指導の効果測定に使用可能な指標を実証的に探しだす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成23年度に、分析を既に終えた本研究の結果の1部を学会で口頭発表した(2件)。そして、口頭発表した研究の論文を完成させ、査読付き国際学術雑誌に投稿した(2編)。2編の論文は査読結果に基づく書き直しが必要となったが、修正版はアクセプトされ掲載された(平成24年度の研究成果欄参照)。また、平成24年度に本研究結果の1部を新たに学会で口頭発表し、論文にまとめ、査読付き国際学術雑誌に投稿準備中である(1編)。これら投稿論文の修正作業と新たな論文執筆は予定より時間を要し、その結果平成24年度に行う予定であった研究計画全てを遂行することが困難になった。さらに、英作文のT-units、S-nodes等の分析は、当初平成24年度中に終了する計画であったが、分析を依頼した補助研究者2名の内1名の作業が予定通りに終了せず(平成24年度末未終了)、全体の研究計画が大幅に遅れることになった。 平成24年度中に行った分析では、ピアフィードバックを取り入れた英語ライティング指導を行った結果、英作文の総語数と全体の質の両面で、学習者の英語ライティング力に向上がみられることがわかった。他方、具体的にどのような点で変化・向上がみられるのかについては、明らかにすることはできなかった。すなわち、本研究の3つの研究目的のうちの1つに関連した課題―ピアフィードバックを経験することにより、(1) 学習者の英語ライティング力が変わるのか、(2) さらに英語ライティング力に向上がみられる場合はどのような点でみられるのか―の (2)について、現在作文データを分析しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度はまず、本来平成24年度に行う予定であった研究を行う。具体的には、既に収集済みのデータ(指導前・後に2クラス2群の同一の学生が書いた英作文)を基に、英語学習者の英語ライティング力の発達指標になりうる指標を実証的に探り出す分析を終了させる。その上で、その指標を使って、別の2群の学生が指導前・後に書いた英作文の分析を行い、探り出した英語ライティング力の発達指標の有効性を検証する。そして、この研究結果を関連学会で口頭発表し、その後論文にする予定である。 以上のように研究計画の遅れを取り戻した後に、平成25年度の計画を実行に移す努力をする。但し、現在のところ、本研究の最終年度にあたる平成25年度末に、研究の1年延長を願い出る可能性が極めて高い。当初の平成25年度の研究計画では、学習者がピアの英作文を読んで書いたピアフィードバックの内容分析を行う。この分析結果を基に、授業でピアフィードバックを用いる際の教師の役割を考えた上で、英語ライティング指導方法・手順を決める予定である。あわせて、学習者の英語ライティングに対する態度や動機づけがどのように変化するのか調べるために、アンケート質問紙調査項目を決める。そして、可能であれば研究協力者の授業で、ピアフィードバックを用いたライティング指導を試行的に継続して行ってもらい、指導期間中に学習者が書いた英作文を収集するだけではなく、開発した質問紙を用いた調査を行う。 最後に、本研究の総括を行い、実証的に探しだしたライティング力発達指標の信頼性・妥当性を検討するとともに、ピアフィードバックを用いた英語ライティング指導のあり方をさらに検討・考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在行っている2群の大学生が書いた英作文の分析結果から導き出した尺度を用いて、別の2群の大学生が書いた英作文を分析し、その尺度の信頼性・妥当性を検討する。その際、収集した作文全体の比較分析だけではなく、特に指導後評価点が顕著に上昇した学生の指導前・後の英作文に注目して、単語、文、節、T-units、S-nodesそれぞれの総数及び文、節、T-unit当たりの語数、T-unit当たりのS-nodes数、語彙の多様性 (type-token ratios)等のうち、どの点で向上しているのか、比較分析を行う。この分析は、計画当初は平成24年度に行う予定であったが、25年度に持ち越した。この遅れのため、平成24年度研究費に未使用額が発生し、平成25年度に繰り越した。この分析作業を終了させた後、さらに平成25年度は、指導後作文評価点が顕著に向上した学生が、毎週宿題で書いた英作文と授業中ピアの宿題の英作文を読んで書いたピアフィードバック(学生1名当たり、英作文とピアフィードバックそれぞれ約12編)を分析する予定である。これらの分析は、複数の研究補助者が行う必要がある(そのための謝金が必要)。この分析作業が終了した後、研究結果をまとめ、研究成果を関係学会で口頭発表し、論文を完成させる予定である(そのための旅費及び英文校閲費が必要)。この他、本研究課題と関係する学会やセミナー等に積極的に出席し、本研究に関する新たな知見や情報を得たいと考えている(旅費及び参加費が必要)。
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