研究課題/領域番号 |
23520686
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
大森 裕実 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (00213877)
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キーワード | 英語 / 音声学 / CALL / ICT |
研究概要 |
本年度の本研究は、昨年度の研究を継承発展させ、年齢や外国語学習歴の異なる多様な最近の大学生がみずからのペースで英語音声を習得できるように、それを補助・強化するための音声学習プログラムを開発し、学習者の発音矯正と学習者ペースの英語音声習得を目標に定め、コンピュータと人的資源を活用したサポート体制を完成させることが課題であった。而して、本研究では、大学生という臨界期を過ぎた成人の外国語学習者が「認知し、理解し、納得したうえで、みずから進んで学習する心的態度を涵養するにはどうしたらよいか」を考究し、自律学習型の補助・強化となる視覚認知型の音声聴覚イメージを学習者が獲得できる学習モデルを構築し、実効性の高い運用プログラムを考察するところに意義がある。 本研究目的を達成するために、第三段階としては、第二段階において整備過程の途中にあった実験実習体制の完成を図るべく、新たな試み「スピーチ・クリニック」実施に際して実効性及び即応性をもつと考えられる音声ソフトGlobalvoice CALL (HOYA社音声ソリューション部製)を増設し、クリニックの精力的活動を行ない、同時に被験者カルテを作成してデータ蒐集にも努めた。 これと同時並行して、所属機関で実施する英語能力試験(CASEC及びTOEIC)の得点に学内成績(GPA)と入学試験カテゴリーを加えた「外国語学部生学力情報総合データベース」を作成し、TOEIC試験において測ることのできたリスニング能力と本研究の重要な位置をしめるクリニックにおける発音トレーニング時間数との相関関係について、ある程度の有意な数値を得ることができた。また、本研究とも関連するTOEIC分析を所属大学・学部の「英語教育FD 2013」で報告し、他の研究者との意見交換を行なうことができたことは大きな収穫であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体的にみて、本研究は第三段階(最終段階)に入り、予定よりやや遅れているといえる。計画した「音声学実験実習室」を利用した「スピーチ・クリニック」のインフラ整備は一応は完成し、被験者に対する英語能力試験(CASEC及びTOEIC)も実施することができ、当該学生の総合的英語力データベースも作成することができた。ただし、次の三点において計画修正を余儀なくされたため、一年の研究延長を行なうことになった。 (1) 本実験実習室ではWin.XPを搭載したPC5台をクリニックに利用していたのだが、XPサポート終了に伴ないWin.8への速やかな移行を予定したところ、所属機関の情報ネットワーク・インフラ整備(無線LAN対応)の遅れに起因して、新機種PCの導入とデータ移行が遅延してしまったこと。 (2) 被験者のクリニック時間数と英語能力試験の成績との相関関係を同一年度内に確認するために、クリニック終了時期とTOEIC-IP受験時期を調整しなければならなくなったこと。 (3) 所属機関の高等言語教育研究所CALL/ICT部門と連携した活動を行なうことが、クリニックの実効性を高めると判断したが、その調整が必ずしも順調には運ばなかったこと。 しかし、それとは対照的に、本研究の基礎的データ蒐集の拡充及び本研究に基づく英語音声教授法実践の試みとして、英国ウィンチェスター大学でTEFL(外国語としての英語教授法)を専攻するイギリス人留学生を対象とするコースにおいて、Phonetics(音声学)を三年間にわたり担当する機会があり、研究全体は確実に推進できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の進め方は次のようになる。 (1) インフラ整備に改善を施した「スピーチ・クリニック」を利用した実験実習を継続的に推し進め、できるだけ多くの学生を対象としたデータ――実験群と統制群との英語習熟度の差異を明らかにするためのデータを精力的に蒐集する。 (2) 本研究に関連した第一線級の研究者を招聘した学術講演会を企画・開催して、当該研究分野に関する理解を深める。 (3) 本研究の中核に位置づけた「スピーチ・クリニック」を「音声教育ソルーション・センター」とみなして、近隣の大学(名古屋外国語大学、名古屋学院大学、中京大学)の音声学担当者と意見交換を行ないながら、その内容をまとめて、クリニック・ホームページ上で情報発信する。 (4) 実験実習によるデータを分析して、大学英語教育学会(JACET)第53回国際大会(広島市立大学;2014.8.28-30)で行なうシンポジムでその一部を報告する。 (5) 三年間の実験実習から得られたデータとクリニック実施の経験に基づく「英語音声学習プログラム」を開発し、その公開により、学生の自律的学習に寄与する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究推進のために開設したスピーチ・クリニックにおいて、実験実習の機能を向上させる目的で実習用パソコン5台(OSはサポートサービスの停止したWin.XP)を平成25年度に買い替える予定であったが、所属機関のインフラ整備の遅れから、最新のOS(Win.8)に無線LANが対応できないことが判明し、その導入(速やかな移行)を断念したため、また、想定外の公務繁多で、予定していた海外の国際学会に参加することができなかったため、未使用額が生じた。 所属機関のインフラ整備が改善された段階でWin.8を搭載した新パソコンを購入するとともに、音声トレーニングソフトGlobalvoice CALLのライセンスを改めて取得し、実験実習機能の強化を図り、また、国際大会にも参加して、研究成果について発表する。次年度の本研究遂行に際しては、当初申請予算より減額見直しを図った設備備品(図書、音声分析ソフト追加分)及び旅費を中心に、本年度未執行額を加えて研究費を使用する計画である。次年度の研究費使用内訳としては、設備備品費(図書、音声分析ソフト)380、旅費500、人件費360、その他(学会参加、論文投稿料、印刷)400 [合計 1,640](単位は千円)を予定する。
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