本研究は、年齢や外国語学習歴の多様な最近の大学生がみずからのペースで英語音声を習得できるように、それを補助・強化するための音声学習プログラムを開発し、学習者の言語音リテラシーを向上させる効果的学習方法を考案することを目的とした。すなわち、大学生という臨界期を過ぎた成人の外国語学習者が「認知し、理解し、納得したうえで、みずから進んで学習する心的態度を涵養するにはどうしたらよいか」を考究し、自律学習型の補助・強化となる視覚認知型の音声聴覚イメージを学習者が獲得できる学習モデルを構築し、実効性の高い運用プログラムを考究したところに意義がある。 本研究目的を達成するために、予備的段階として、既設の音声学実験実習室をスピーチクリニックとして運用できるように整備した――この新しい試みに活用できる音声ソフトMulti-Speech 5600及びSpeech Analyzerを導入し、翌年度、最新の自律学習向け音声ソフトGlobalVoice CALLの増設を行ない、ソフト面の整備が完了した。また、所属機関で実施する英語能力試験(CASEC及びTOEIC)の得点データも利用して分析できるように「外国語学部生学力情報総合データベース」作成にも着手した。次に、本格的段階として、学習者が「発音・強勢・抑揚・タイミング」の4点を自己評価しながら英語音声獲得を進める個別指導を行ない、当該データを収集し、その特徴について分析した。また、英語能力試験で測ることのできたリスニング能力と本研究の中核である発話能力との強い相関性についても考察した。 最終年度には、音声学習プログラムは、語用論的観点から、連続発話における脱強勢化や、文構造と音声情報の関係を盛り込んだTact/Discourse Grammarとして提示することが適当であるという結論に達し、オーラルとリテラルの融合を試みる音声文法を著わした。
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