研究課題/領域番号 |
23520692
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研究機関 | 常磐大学 |
研究代表者 |
飯村 英樹 常磐大学, 国際学部, 准教授 (30382831)
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キーワード | リスニングテスト / 多肢選択式テスト / 錯乱肢 / テストテイキング・ストラテジー / リスニング・ストラテジー / タスク |
研究概要 |
本年度は研究計画の2年目であり,2つの実験を実施し,また来年度実施予定の実験テストを作成した。 1つ目の実験では,4種類のタスク(写真描写,応答問題,ダイアローグ,モノローグ)から構成されるTOEICのリスニングテストを用いて,日本人大学生のべ400名の参加者からデータを得た。実験の目的は,3択テストを作成するための基礎データを収集することにある。テスト実施後,テストの信頼性や正答率,弁別力等の基礎的テスト情報を出力した。また各テスト項目の錯乱肢を最も魅力のあるもの,すなわち受験者に最も選ばれた錯乱肢から最も魅力のないもの,すなわち受験生に最も選ばれなかった錯乱肢に順位づけを行った。 これらのデータをもとにして,各テスト項目から1つの錯乱肢を除外(1.最も魅力のある錯乱肢,2.最も魅力のない錯乱肢,3.それら以外の錯乱肢)した3択のテストを作成した。これらの3択テストと4択テストのデータを比較することによって,錯乱肢の特徴が,テスト全体の正答率や信頼性,識別力などに与える影響を明らかにすることができる。 2つ目の実験では,前述の4種類のリスニングタスクを受験者がどのようなプロセスで解答しているかを,発話プロトコルを用いて調査した。参加者は,日本人大学生21名である。実験の目的は,各タスクにおけるテストテイキング・ストラテジーを分析することによって,タスクの違いが選択肢の選び方とどのような関わりを持つのかを明らかにすることである。選択肢の数に関する先行研究は数多く存在するが,そのどれもが量的分析にとどまっている。またこれまでのリスニングにおけるテストテイキング・ストラテジーの研究は,タスクの違いを考慮していない。これらの点を踏まえると,本実験の質的分析により,より詳細な多肢選択式リスニングテストにおける回答プロセスが明らかになると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書では,2年目に4択テストを実施し,錯乱肢の情報を分析して,その結果をもとに3択テストを作成・実施する予定であった。現在までのところ,4択テストの実施,錯乱肢の分析,そして3択テストの作成までは行うことができた。しかし3択テストは実施できなかった。これは,4択テストのデータにおける信頼性を高めるために,当初,3択テストを受験してもらう予定だった参加者に4択テストを実施したからである。しかし本研究においては,4択テストのデータが錯乱肢の機能を調べるうえで最も重要なものであるとの判断から,このような対応をとった。
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今後の研究の推進方策 |
4択テストのデータから作成した3択テストを,できるだけ多くの受験者を対象に実施してデータを収集する。そのため,学内においては,広く実験参加者を募り,年間を通じて実験ができるようにする。また昨年度データ収集に協力していただいた他大学の教員には,引き続きデータ収集の依頼をする。 また平成24年度に実施した発話プロトコルによるデータの質的分析をすすめる。調査の質を高めるために,専門的知識を持った学内外の英語教育研究者に,申請者の分析の妥当性を評価してもらうことにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
発話プロトコルデータの分析の質を高めるために,テキストマイニングソフトを購入する。また英語教育関連および統計関連の図書を購入し,国内の学会に参加することで,情報を収集しより妥当性の高い調査方法を模索する。さらに実験参加者への謝金を使途とする。
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