本年度は研究計画の最終年度となる4年目であり,昨年度までに実施した実験の分析を行った。 1つ目の実験(研究計画2年目に予備実験と3年目に本実験を実施)では,3種類のリスニングタスク(写真,ダイアローグ,モノローグ)における4択(オリジナルの正答肢1つと錯乱肢3つ)と3択(実験版の正答肢1つと錯乱肢2つ)の違いを難易度・弁別力・信頼性の観点から比較検証した。分析の結果,(1)選択肢数の違いは,弁別力と信頼性には影響を与えないこと,(2)選択肢数の違いは,難易度に影響を与えること,(3)その影響は,タスクとしての難易度が比較的に高いモノローグ・タスクに限定されること,が明らかになった。以上から,多肢選択式リスニングテストにおける選択肢の数の違いは難易度に影響を与え,それはタスクによって異なることが示唆された。 2つ目の実験(研究計画2年目に実施)では,4種類のリスニングタスク(写真,応答,ダイアローグ,モノローグ)におけるテストテイキング・ストラテジーを,有声思考法(プロトコル)を用いて調査した。分析の結果,(1)熟達度によってストラテジーの数と種類が異なること,(2)タスクの難易度によってストラテジーの数が変化すること,(3)上位群では,正解・不正解によってストラテジーの数と種類が異なる一方,下位群では正解・不正解によってストラテジーの数は異なるが種類は変わらない,ということが明らかになった。よって,多肢選択式リスニングテストにおいて受験者が用いるストラテジーは,タスクの種類・熟達度・正解・不正解によって異なることが示唆された。
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