研究課題/領域番号 |
23520693
|
研究機関 | 東京国際大学 |
研究代表者 |
成田 真澄 東京国際大学, 言語コミュニケーション学部, 教授 (50383162)
|
キーワード | 学習者コーパス / ライティング能力 / 第二言語ライティング / 名詞句構造 |
研究概要 |
本年度の主たる研究課題は、日本人英語学習者が産出した英文ライティングにおける名詞句の構造的な複雑さを量的に分析することであった。次年度に規模を拡大して実施する研究のパイロット調査として実施した。 日本人英語学習者(大学生)が産出した英文ライティングデータとして、言語資源協会から配布されている Konan-JIEM Learner Corpus を使用し、名詞句内の後置修飾要素(前置詞句や関係代名詞節、分詞節など)の構造と頻度に着目し、これらが学習者の英語習熟度によってどのように異なるのかを量的に分析した。分析結果を研究論文としてまとめ、東京国際大学言語コミュニケーション学部の論文誌『論叢』に投稿・公開した。 本パイロット分析では、分析対象とした英文ライティングデータの規模が大きくなかったため、名詞句としてのまとまりを示す情報を人手で入力した。次年度に大規模なデータを扱うことを念頭に置き、自動的に単語に品詞情報を付与するツールの候補として、ウェブ上で公開されているTreeTaggerを試用した。次年度は、本ツールを用いて、大規模データを効率的に分析するという見通しを立てた。 本年度の研究により、日本人英語学習者が産出する名詞句内の後置修飾要素には、英語習熟度が上がると構造的に複雑性が増すという特徴がある一方で、後置修飾要素の使用における多様性が増すということも明らかになった。こうした知見を次年度の研究に取り込み、より精緻な分析(質的分析)につなげていきたい。 さらに、これまでの研究成果を国際会議(1件)と国際会議論文集(1件)にて公開した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最近になって、日本人英語学習者(大学生)による英文ライティングデータを収集した「学習者コーパス」は複数の機関で構築・公開されている。この利点を活かし、本研究はおおむね順調に進展している。 本研究の主たる課題である、英語学習者が作成した英文における英語名詞句の構造の「複雑性」とその「正確性」の発達研究において、後者の正確性を詳細に分析するためには学習者の英作文データに文法的な誤りに関する情報が付加されていることが望ましい。学習者の誤り分析には多大なコストを必要とするため、公開されている「学習者コーパス」においても誤り情報が付加されているのはその一部分である。この制約があるため、日本人英語学習者がおかしやすい誤りの分析を大規模に実施することがきわめて困難な状況にある。 前述したように、名詞句構造の「正確性」の発達においては、分析の規模において限界がある。それでも、本研究の最終年度にあたる次年度では、利用できる誤り情報を最大限に活かし、構造的な側面での言語発達と関係づけながら、日本人大学生の英語名詞句の発達を俯瞰し、まとめる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度であり、これまでの量的分析による研究成果を整理するとともに、より大規模な学習者データを使用して日本人英語学習者が英文ライティングにおいて使用する名詞句の構造の「複雑性」と「正確性」の質的分析を実施する。 さらに、量的・質的分析結果に基づき、日本人英語学習者の特徴を踏まえた英文ライティング指導法を考え、英文ライティングの授業で実践する。授業実践については、アンケート調査を行って評価を行う。評価結果に基づいて、今後の英文ライティング研究・英文ライティング指導上の課題をまとめる。 最終的には、これまでの研究成果と次年度の研究成果を、ホームページを開設することにより、一般に公開する。同時に、英文ライティングに関わる国際会議で研究発表するとともに、研究論文としてまとめ、学術論文誌に投稿する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|