研究課題/領域番号 |
23520696
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
山内 真理 千葉商科大学, 商経学部, 准教授 (40411863)
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研究分担者 |
スタウト マイケル 東洋学園大学, 英語教育開発センター, 講師 (80600171)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | e-ラーニング / CALL / Moodle / 大学英語教育 |
研究概要 |
平成23年度は、情報発信/交流活動の中心となるプラットフォームとしてブログを選択し、授業内外の活動の連携のあり方、発信型の英語使用および交流活動、そしてICTツール利用のそれぞれと活動意欲・学習動機との関係について、研究代表者および研究分担者による異なる授業環境での授業実践を通して調査を行なった。代表者は主に普通教室の授業外課題としてブログ活動を取り入れ、分担者はコンピュータ室で授業内でもICTツールを活用する授業設計を行なった。 授業実践を通じて、(1) 教科書を離れ、自分の伝えたいことを表現し、友人や他大学の学生の日常生活や関心事を知るために英語を使う活動が、英語に対する意識の変革(教科→道具)をもたらし学習意欲向上に寄与すること、(2) 英語使用に対する内気さや気後れも確認されたが、それ以上に学外(特に海外)との交流活動への関心が高く、また授業内外でのコミュニケーション活動自体が内気さや気後れを克服するのに役立つこと、(3) 発信に対するフィードバックとしての文法指導の効果が高いこと、(4) ICT利用度の格差が大きく、学外での活動の特に初期段階では携帯端末の利用を選択肢に入れ、山内(2009, 2010)で指摘されているように、ICTツールを利用する活動は段階的に導入すべきであること等が確認された。 海外交流との準備段階としてパイロット的に行なった多大学間のブログ交流では、授業単位の交流以上に、活動の組織化が重要になることが確認された。利用するプラットフォームと参加教員のバックアップ作業を含めて、組織化の改良が必要である。 なお、iPadのグループ利用は試行段階にとどまったが、ハンズオンに役立たせるための適正数と授業内活動を活性化する利用法、および管理面でのノウハウが蓄積が開始され、教員単位で導入する際に留意すべき点が明らかになってきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
授業外の英語活動の促進に関わる学習者要因に関して、想定していた主要な6要因の検証を十分に行い、現時点で同定された要因に配慮して次期の実践計画を改良することができた。(1)(2) 学内プレースメントテストと授業活動状況に基づき、多くの学生が英語力が英検3級以下(CEFRではA1ないしA2レベル)であることが確認された。当該年度、研究代表者は異なるレベルの授業が配当され、対比により英語力不足がコミュニケーション活動への参加を阻害すること、また発信活動を中心の授業設計は下位の学習者にも有効であることが確認できた。次年度以降、共通の判定テストを用意し、活動参加に影響する度合いを他の要因と比較する。(3) 活動設計において、最初から自発的な英語学習および使用を期待すべきではないことが確認された。初期段階では強制が必要であるが、活動参加経験が次の参加の動機づけにつながる。(4) 情報発信・交流活動への抵抗感は確認されたものの、広い交流への関心が想定以上に高いことが分かった。(5)(6) コンピュータ使用経験については格差の大きさと、その差に関わらず授業外コミュニケーションには携帯端末の利用が好まれることが確認された。普通教室では何らかの形でハンズオンを取り入れることが望ましい。英語力は不足しているがICTスキルの高い学生が助っ人役になるようなグループ活動は多方面に良い効果がある。 若干遅れている面としては、以前の実践との対比をふまえた評価が公開できる形に至らなかったこと、また、当初予定していたMoodle導入を見送ったことがあげられる。Moodle については一度2.0への移行に失敗した点が大きいが、年度内に最新版を用意し次年度からの利用の準備は整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
23年度の実践結果に基づき、24年度は次の点から「英語を使いながら学ぶ」授業設計のモデル化をはかり、異なる授業環境での実施・応用可能性を検討する:(1)学習者要因および学習効果の測定:意識調査の項目改訂、学力判定のための共通テスト作成、学習者のアウトプットの分析を行なう;(2) Moodle活用実践:クラス単位でのコース利用から開始し、Moodleを利用した学外交流活動の準備を行なう;(3) 発信・学習活動に利用する種々のアプリケーションの試用と評価:24年度から導入するMoodleおよび23年度に部分的に試用したアプリケーションも含め、活動タイプや授業環境への配慮を加味した評価を行なう、(4) 学習リソースの作成・整備およびその効率化:Moodle外で作成したリソースのインポート、Moodle内外でのリソースの管理、および教員間でのリソース共有のノウハウも整備する;(5) 学外交流プロジェクトの組織化:1対1の短期イベント型交流から始め、多大学間の交流・自由度の高い長期的な交流の検討へと進む;(6) 教師主導から学習者主導へと移行するための授業内外の活動設計:発信への訂正フィードバックの検討も含む;(7) iPadのグループ利用のノウハウの蓄積:授業内活動を活性化する利用法、授業外活動の促進に役立つ利用法、本体およびアプリケーションの管理を含む。 同時に、23年度から国際学会での意見交換やFacebook等を通じて開始している教員同士のコミュニティの充実化につとめ、本研究期間以降も持続しうる国内/国外の交流プロジェクトの土台を築く。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) iPad の授業内利用に関して、ハンズオンのために最大2人で1台のiPadが利用できるよう数を増やす。本体、iTunesアカウント(iP10台につき1つ必要)、アプリケーション管理のため、ノートブック1台、一斉充電が可能なUSBハブ1台を購入し、管理補助のアルバイトを使う。(2) 授業実践および授業設計モデルについての意見交換を行い、交流プロジェクトやリソース共有に関する共同参加者を募るため、学会での口頭発表やワークショップを積極的に行なう。このための旅費、参加費、資料作成費用が必要になる。(3) 学習者の意識調査と分析のためのオンラインアンケートサービス、学習者のアウトプット解析ツール、研究代表者・分担者間で利用するオンラインファイル共有サービス、学習リソース作成ツール/サービス等のライセンス料が必要である。(4) 特にモバイル学習や iPadの教育利用に関して、新しい実践報告や研究成果が次々に発表されており、発表論文や書籍のレビューを継続して行なう必要がある。
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