研究課題/領域番号 |
23520696
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
山内 真理 千葉商科大学, 商経学部, 准教授 (40411863)
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研究分担者 |
スタウト マイケル 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (80600171)
橋本 隆子 千葉商科大学, 商経学部, 准教授 (80551697)
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キーワード | e-ラーニング / CALL / Moodle / ブログ / アウトプット分析 |
研究概要 |
平成24年度は、ブログおよびTwitterを用いた発信・交流活動実践と、Facebookグループを利用した広範囲の交流の試みを行った。学習者を授業外で自発的に自然なインタラクションに参加させることが大きな目的ではあるが、そのような場を提供しても意欲の低い学習者や自信のない学習者は動かない。また一定レベルの英語力に達していなければ教員からの訂正フィードバックが必要である。自由度の高いインタラクションにはFacebookやTwitterが、訂正フィードバックを与える程度に学習者のアウトプットを管理するにはブログの方が適している。このように活動目的・学習者特性(意欲・英語力・ICT活用力)の点からプラットフォームと活動タイプの類型化に取り組んだ。 発信活動の効果を測定する1つの方法として、24年度は学習者のアウトプット分析に着手し、ブログのエクスポートファイル(xml)を分析用に処理するツールを開発した。本研究で重視するタイプのエラーをマークし全文中に当該エラーを含む文の率を比較する、という予備分析を行い、この手法でアウトプットの質的向上を測定する目処が立った。Twitter やFacebook上のアウトプットは(現時点では)このような分析を行なうのが難しく、次年度の分析対象はブログに限定することとする。 ICT利用に関しては、代表者の担当授業では、24年度より2人で1台のiPadが利用できるようになり、授業内で投稿を見ながら会話をしたり、ペアでプレゼン動画を作成するなど、発信活動の幅を広げることができた。一方、少数ながら新しいツールに抵抗を示す層が確認された。また改訂したICT利用実態調査から、インターネットおよびコンピューターの利用度は高いが、タイピングに関しては携帯電話の日本語キーボードにしか使っておらず英語でのタイピングに抵抗を感じる学生が相当数いることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「英語を使いながら学ぶ」授業設計のモデル化に向け、24年度は(1)学習者要因および学習効果の測定・(2) Moodle活用実践・(3) 発信・学習用アプリケーションの試用と評価・(4) 学習リソースの整備とその効率化・(5) 学外交流プロジェクトの組織化・(6) 発信に対する訂正フィードバックの検討・(7) iPadのグループ利用のノウハウの蓄積、を中心に研究を進めた。 (1) 「ICT利用」「発信活動」「ペアワーク」「活動の有効性」に対する意識をクロス集計し、活動参加意欲の高さと最も相関が高いのは「活動の有効性への評価」であることが分かった。またアウトプット分析の手法を提案し、予備的な効果測定を行った。(2) ログインの必要なMoodleを利用するには1人1台の端末が必要であり、コンピュータ室のみでの実施となったが、Moodleでの交流活動の1タイプとして、通常授業と交流活動を密接に連携させる設計の有効性が確認された。(3) 24年度は研究代表者の担当授業においてiPadを本格的に導入し、特にプレゼン動画作成が有効な学習活動になることが確認された。(4) 学習リソースはブログと他のWebツールの組み合せで十分に管理できる。ただし、Quizlet等も試したが、練習問題にはLMSが最適である。今年度はMoodleのバージョンアップはしたがサーバーの不具合等のため、練習問題整備は十分に進めることができなかった。(5) 交流プロジェクトは、1対1のイベント型交流の実施に加えて、広範囲で自由度の高い継続的交流の場としてFacebookグループも設置した。目的に合致する交流タイプを選ぶ出発点が用意できたと考える。(6)ブログ投稿に対する効果的な訂正フィードバックのモデルを提示する用意ができつつある。(7) 共用iPadの管理と活用についてノウハウが蓄積され共有する準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は発信活動の効果測定とMoodle(および授業ブログ)でのリソース整備に重点をおく。 Facebookでの自由なインタラクションや他大学のブログ訪問などの活動を取り入れる可能性もあるが、今年度は「交流」は二次的な扱いとする。 環境面での変更として、iPadの台数増加とMoodleサーバーの移行があげられる。授業内での語彙や文法の確認復習にMoodleを利用し、情報の発信/共有の場としてブログを利用する形で学習活動を組み立て、24年度に紙版で行い一定の効果がみられた「訂正フィードバック」を兼ねた練習問題を、今年度はMoodle で行なうこととする。Moodleでは練習問題への取り組みを数量的にとらえることが可能になり、これも学習活動を評価するデータとして用いる計画である。 ブログの利用法については、前年度までで明らかになった「共有アカウント利用のメール投稿」のデメリットを避け、またアウトプット分析処理を容易にするために、各自のアカウントを作らせ、投稿者として登録した形でブログ活動を行なうことにした。このブログ利用法の違いが学習者の活動にどの程度影響を与えるか、前年度の実践と比較を行なうと同時に、大学のWi-Fiの利用も含め、こうしたツール利用の準備にどの程度の時間がかかるも観察事項である。 また、24年度に導入した発信活動であるiPadを利用したプレゼン動画作成(およびブログ上での動画共有)を引き続き取り入れるが、端末数が多いためより柔軟に使うことができる。24年度の実践結果との比較も含め、この発信活動の効果を検証する。 この3年の実践から得られたデータをまとめ、発信活動および交流活動を軸とするICT活用授業の設計モデルを提案するとともに、授業でのウェブツールやiPadの活用に関して蓄積されたノウハウを共有するためにワークショプを実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 授業実践および授業設計モデルについての研究成果発表を行い、今後の交流プロジェクトやリソース共有に関する共同参加者を募るため、学会(JALTCAll、 LET、リメディアル教育学会、Moolde Moot など)での口頭発表やワークショップを積極的に行なう。このための旅費、参加費、資料作成費用が必要である。 (2) Moodleのサーバー料金、学習者の意識調査と分析のためのオンラインアンケートサービス、学習者のアウトプット解析ツール、研究代表者・分担者間で利用するオンラインファイル共有サービス、学習リソース作成ツール/サービス等のライセンス料が必要である。 (3) iTunesアカウントを3つ用意し、iPad28台分のアプリケーションを購入・管理するための費用が必要である。
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