研究課題/領域番号 |
23520700
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
金子 育世 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (00360115)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 第二言語習得 / 日本人英語学習者 / 感情表現 / スピーキング / ライティング / 言語特性 / 習得過程 / 発表的技能 |
研究概要 |
日本人英語学習者のライティングにおける感情表現とその習得過程を観測するため、生成(作文)実験を実施した。感情の中でも、「懇願」に着目し、感情表現が自然な形で多く使用されると考えられる「手紙」という形式を用いた。海外滞在経験のない日本人大学生と英語母語話者を被験者として、「大学の授業料が急に払えない状況になり、大学に在籍し続けるために借金を懇願する」という課題のもとで手紙を書かせ、日本人被験者の感情が日本語と英語でどのように表現されるかを観測した。日本人英語学習者については、2回のセッションに分け、日本語と英語で手紙を書かせた。第一言語(L1)の作文の影響を排除するために、まず英語によるライティングを実施し、その1週間後に日本語によるライティングを実施した。ライティングの所要時間には制限を設けず、辞書の使用も許可し、余分な緊張感のない環境でライティングができるように配慮した。米国人被験者については、1回のセッションで同じ課題にもとづく手紙を英語でのみ書かせた。 英語で書かれた資料(手紙)において、日本人英語学習者のライティング熟達度を観測した。手紙の長さ(文字数)、感情表現を中心とした使用語句の難易度、構文の複雑さ、手紙のパターン等を分析し、米語母語話者のものと比較した結果、日本人英語学習者においてライティング熟達度とTOEICスコアとの相関関係や、感情表現の習得度とTOEICのスコアの相関関係を示唆する傾向が観察された。また、英語母語話者による手紙とは異なる英文のパターンも観測された。 現在、Martin & White (2005)によって提案されたアプレイザル理論を用いて英文資料を分析し、日本人英語学習者と英語母語話者の感情表現の言語特性を機能言語学の観点から比較、検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、本年度内に2つの感情に着目し、それぞれの感情が日本語と英語でどのように表現されるか、また感情の種類によって表現の習得度に差異が観測されるのかを検討・分析する予定であった。しかしながら、英文資料を分析する方法として新たにアプレイザル理論による評価法を加えたため、計画していたよりも分析に多くの時間を費やすこととなってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
まず、着目する感情の種類を増やし、社会言語学的背景の異なる感情がそれぞれ日本語と英語によるライティングにおいてどのように表現されるか、また感情の種類によって表現の習得度に差異が観測されるのかを検討・分析する。さらに、感情的プロソディとその習得過程を観測するために、スピーキングにおける生成実験を実施し、文字言語と音声言語における類似点と相違点を検討することも計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費はおもに以下の為に使用する予定である。1)日本語と英語によるライティングおよびスピーキングの生成実験を実施するため、実験に必要な備品(原稿用紙、辞書、録音用CD-ROM等)を購入する。また、被験者となる日本人英語学習者と英語母語話者に対する謝金や、実験実施の補助や言語資料の分析補助に対する謝金としても使用する。2)スピーキングの生成実験で得られた音声資料を分析するための音声分析ソフトウェアを購入する。3)本研究では英語母語話者を被験者とするため、国外で実験を実施する予定である。そのための旅費として使用する。また、資料収集および研究成果発表のための国内外旅費としても使用する。4)言語学、音声言語科学、英語教育学関係の図書購入費、文献複写費、学会参加費、論文投稿料として使用する。
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