研究課題/領域番号 |
23520701
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
渡部 良典 上智大学, 外国語学部, 教授 (20167183)
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研究分担者 |
加納 幹雄 金沢大学, 学校教育系, 教授 (70353381)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 英語教員の技能 / 妥当性 / 教員養成 / 現職教員 / 教員としての資質 / 診断システム / 教育実習生 / 問題の特定 |
研究概要 |
通常、教育における診断といった場合、効果的な指導法がすでに明らかになっており、その指導法を使いこなせるのが理想の教員であるということが前提となっている。この前提において、教員の資質については言語能力、指導力、対象言語に関する知識などに分類され、授業観察用にチェックリスト形式を作成するということが行われている(Richards & Nunan、1990;Bailey、2009;Coombe, 2007他)。しかし、それでも尚効果的な指導というのは学習者があって意味をもつのであり、優れた教員の資質は簡単に規定できない。そこで、本プロジェクトでは個人の教員がうまくゆかないと主観的に認識した問題を診断することから始めることにした。 本年度は、1)新任教員、教育実習等の指導経験のある教員志望の現役学生を対象に、彼らの抱えているさまざまな問題を特定すること、2)言語教育研究の分野で行われている診断テスト開発のための調査研究をまとめることを中心に進めた。 1)の結果、多くの学生は外国語習得の理論研究や外国語そのものの知識よりも、板書計画、生徒からの質問への対処、同僚との協調関係の気づき方、といったより実践的な知識や技能の必要としていることがわかった。 2)の結果、テスト研究では確かに診断テストの研究が多々行われているが、そのはほぼすべてが言語学習者を対象にしたものであり、外国語の教員の指導技能について、能力運用双方を考察の対象としたものが皆無であることが分かった。今後は医学、臨床心理、教育学等にまで視野を広げる必要があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記に記載した目的のうち、1)「各分野における診断テスト」については、未だ十分とは言えないが文献や学会等で情報収集が進んでいる。特に、言語教育および言語教育評価についてはかなりの量を収集したが、分析は未だ途中であり十分とは言えない。2)「教育実習生を対象とした聞き取り調査」については、英語教育関係の授業、実習生への聞き取り調査およびアンケート調査を通して、50名程度からの多角的な情報が得られた。さらに、実習前の学生たちにとってどのようなことが関心事なのかについても情報が得られた。3)「現職の新任教員を対象とした聞き取り調査」については、研修会等で情報を得る機会があったが、本目的のためだけに独立して調査を行うことはしていない。現職の特に新任の教員は問題点等について振り返りそれを報告するほどの余裕がないというのが大きな理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度行うべき事項は以下の通りである。1)新任教員は予想外に多忙で調査に参加するほどの余裕がなく、なかなか協力をえることができなかった。次年度は電子メールやウェブ上で回答したり、研修会等の限られた時間内でまとまった情報を得ることを得ることができるように、アンケートや個人面談のための質問項目を整えなければならない。2)教員志望の学生たちからはさまざまな考えや意見を聞き出すことができた。また現職教員からも研修等の参加者に限っては多くの情報を得ることができた。ただし、データの分析と解釈を十分に行うことができなかったので、この点について進める必要がある。3)医学、臨床心理、教育学等、診断の実践と研究に関して進歩している他分野からの情報収集を続け、英語教員の診断に応用できるようにする。4)海外における状況について情報収集、分析、解釈を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)データの収集については、特に現役の教員志望学生および現職教員からの情報収集は50%程度の達成率である。次年度は、さらに現職教員との面談により情報を収集する必要があり、またデータの分析を行う必要があるので、謝金が必要となる。2)海外におけるデータ収集を行うことができなかったので、海外旅費が必要である。3)データ分析についてはほとんど進んでいないので、分析を依頼する際の謝金が必要である。4)申請者2名それぞれが東京と岐阜という遠隔地で教職研究活動を行っているため、会議費および国内旅費が必要となる。5)英語教育以外の分野における診断テストに関する情報をさらに収集するために文献収集費用が必要となる。
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