研究課題/領域番号 |
23520705
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
栗原 ゆか 東海大学, 清水教養教育センター, 講師 (50514981)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 教師教育 / 英語教員研修 / appropriation / 社会文化理論 / ヴィゴツキー |
研究概要 |
中等教育における英語カリキュラムの改革に伴い、近年文部科学省を中心に現役英語教員研修が国内外で実施されている。しかし研修後、参加教員は学んだ専門知識を各自の学校現場の状況に合わせながら実際にどのように活用しているか、また参加教員の授業が実際の生徒の学びにどのような効果をもたらしているのか、という包括的また長期的研究は少ない。従って本研究は、英語教員の研修後の授業を学校現場にて調査し、教師と学習者双方の学びの過程を質・量的研究方法にて明らかにする。これまでに申請者は、北米で行われた海外英語研修(MEXTプログラム)を例に、66名の参加教員のアンケート調査と5名の教員の授業観察やインタビューを実施してきた。平成23年度は、この中から研修で学んだ知識やスキルを円滑に応用している教員(1名)とその生徒(2クラス)、また校長に参加してもらい、上記研究目的に沿って研究を進めた。具体的研究内容と成果を以下に示す。1.参加教員の学校現場での授業と英語教育の信念について授業参観よりさらに明かにした。2.質的研究の信頼性を高めるため、教員の活動場所に関わる関係者(校長、教育委員会指導主事)の見解を検証した。3.英語教員研修プログラムで学んだ理論・実践スキルを参加教員が学校現場でどのように自分のものとして活用しているか(appropriation)をさらに調査した。4.本研究の理論的枠組みを、ヴィゴツキーの社会文化理論そして活動理論の専門家である米国のGeorge Newell教授から指導を得て、さらに本研究を具体化していった。教師教育研究は教員のみならず、その教員が関わる様々な活動場所(学校環境、バックグラウンド、研修、学習者等)を含めた包括的観点から研究する必要性があり、その意味でこの研究は国内・外問わず既存の教師教育研究に新たな見解を示すものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の検証項目(以下を参照)のうち、平成23年度に達成された項目は1)と3)であり、2)、4)~7)またさらに3)に関しては引き続き平成24年度から調査する。1)学校現場での英語教員の授業と英語教育の信念についてさらに明らかにする。2)英語教員が参加した国内の教員研修内容を調査する。3)英語教員研修プログラムで学んだ理論・実践スキルを参加教員が学校現場でどのように自分のものとして活用しているか(appropriation)をさらに調査する。4)英語教員の授業が実際の学生の学びにどのような効果をもたらしているかを授業内資料と意識調査にて検証する。5)2,3,4に基づいた教員・学習者双方の学びの過程とその結果に影響をもたらしている要因を検証する。6)今後の教員研修プログラム開発のための英語教員のニーズを明らかにする。7)英語教員研修プログラムに携わる大学教員のFD教育への提案を明示する。自己点検評価として「やや遅れている」と判断した理由は、継続研究また長期にわたる研究のため、学校や参加教員の事情(受け持ち学年や役職)が原因として挙げられる。学校と参加教員、また代表研究者との話し合いにより平成23年度は上記検証項目の1)と3)のみを実施した。すでに参加者の了解を得て、平成24年度からは学生の学び調査、また新たな参加者教員(1名)も含めて調査を行うことができる予定であり、計画に従って進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
以下平成24年度以降の研究計画と推進方策を述べる。本年度は新たな参加者教員(翌年度以降請求することとなった研究費)を含む計2名の高等学校英語教員に主たる参加者として本研究に参加して頂く。本研究は教師教育を包括的に研究していくため、その参加者教員の生徒(計4クラス)も対象にし、学習者の学びを調べていく。その他、校長や指導主事等、参加者教員が教員活動の中で関わる関係者の協力も得ながら教員の学びを検証していく。今後の研究として、次の研究項目に焦点を置く。1)引き続き学校現場での英語教員の授業と英語教育の信念について調査する(特に新たに平成24年度から加わる参加教員において)、2)英語教員が参加した国内外の教員研修内容を調査する、3)英語教員研修で学んだ理論・実践スキルを参加教員が学校現場でどのように自分のものとして活用しているかをさらに調査する、4)英語教員の授業が実際の学生の学びにどのような効果をもたらしているかをライティング活動資料とインタビュー(意識調査)にて検証する、5)2,3,4に基づいた教員・学習者双方の学びの過程とその結果に影響をもたらしている要因を検証する、6)今後の教員研修プログラム開発のための英語教員のニーズを明らかにする。上記4)であるが、参加教員との話し合いの結果、学生の学びの効果をテストによるものでなく日々の授業の中から得られる資料(ライティング活動)と学生のインタビューによる意識調査で行うこととなった。長期にわたる質的研究においては、参加者が置かれているクラス状況や学校環境を考慮することが重要となるため、上記のような変更が生じた。しかしこれらの資料は「学習者の学び」を観察することにおいて変わりはなく、本研究の目標を変わりなく進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記「今後の研究」計画に沿って以下の内容で研究費を使用する。1)国内旅費として、本研究の主たる参加者(高等学校英語教員)の学校訪問を行う。平成24年度より鳥取県鳥取市に加え、青森県八戸市の高等学校へ訪問することが決まっている。鳥取に関してはさらに3回の訪問、また八戸に関しては5回の訪問を予定している。2)外国旅費として、本研究の成果として学会での口頭発表を計画している。平成24年度の参加先としては、TESOL International ConventionとHawaii International Conference on Educationを考えている。どちらも理論・実践両面からアプローチできる機会であり、本研究の発表先として望ましいと考える。また3)消耗品として、授業観察に必要とされるairpen、また学校訪問にて収集する資料を保存するためのスキャナー、そして社会文化理論を枠組みとした研究書籍を購入する計画である、また4)長期研究のため、参加者教員の謝礼、最後に5)その他として印刷費等を計画している。
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