研究課題/領域番号 |
23520711
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
星井 牧子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90339656)
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研究分担者 |
LIPSKY Angela 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90348194)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 外国語教育 / ドイツ語教育 / 第2言語習得 / 文法習得 / 誤用分析 / 冠詞習得 / 語順習得 |
研究概要 |
1.調査の概要:本研究では、日本語を母語とするドイツ語学習者の文法習得について、語順と冠詞使用の観点から調査を行っている。平成23年度は主に学習者の書いた作文データを主な分析対象とし、語順・冠詞使用におけるエラーを分類し、その特徴とエラーの原因を考察した。早稲田大学および上智大学の学生(延べ99名)が書いたドイツ語作文578テキスト(計85,887語)を分析対象とした。これまでの分析における主な結果は以下の通り。(1)語順習得:副詞類等が前域に置かれた際の定型第2位(INV)と副文の定動詞後置(V-END)のどちらについてもエラーは少なく,INVよりもV-ENDの正解率のほうが低い学生は全体の約3分の1にとどまった。エラー総数の約6割は定型第2位に関するものであった。エラーには統語的複雑さ,語彙的複雑さ、L2のインプット増加による影響が考えられる。(2)冠詞習得:上級者の場合は特に形容詞+名詞、前置詞+名詞の組み合わせにおいて冠詞の省略が多くみられることが分かった。エラーの原因としては,L1からの干渉に加え、L2のインプット増加による影響が考えられる。(3)フィードバックの効果:直接フィードバックと間接的フィードバックを学習者がどのように理解するかについて、学習者7名に対し、発話思考法とインタビューを用いた質的調査を行った。 2.研究成果(途中経過)の報告: 2011年3月30日・31日にProf. Dr. Karin Aguado(ドイツ・カッセル大学)、Dr. Mi-Young Lee(韓国外国語大学)をゲストスピーカーに迎えて研究集会を開催し,研究代表者が(1)について、研究分担者が(2)について調査の途中経過を報告した。また、3月17日~20日に行われた日本独文学会ドイツ語教授法ゼミナールでは、研究代表者が(3)についての発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,学習者の作文データを集め、計85,887語のコーパスを作成した。その上で、作文データにおける語順および冠詞にみられる一定のエラーパターンを抽出し、その原因としていくつかの仮説を立てることができた。これにより,次年度に行う調査(テストによる習得傾向の調査、口頭発話データとの比較、母語が異なる学習者との比較)の基盤ができたことから、本研究の目的はおおむね順調に達成していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の分析結果をもとに、第2段階の調査を行い、分析と考察をすすめる。1.学習者を対象とするテストを作成・実施し、平成23年度の分析結果と比較・検証する。2.口頭発話データを収集し、語順および冠詞エラーの頻度やタイプを分析する。平成23年度に得られた作文データに関する分析結果と比較・検証する。3.日本語と同様に冠詞を持たないSOV言語の韓国語を母語とする学習者を対象とした調査を行い、平成23年度に得られた分析結果と比較する。4.これまでの調査分析結果について、国内外で学会発表および意見交換を行う。5.平行して、語順習得・冠詞習得、言語習得および学習者言語の分析方法等に関する文献・資料を、国内外で収集する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.学習者を対象とするテストの作成・実施。調査の実施に際し、データ入力には研究補助者が必要となることから、謝金・人件費を計上する。2.口頭発話データの収集および分析。データの収集および分析に際し、研究補助者が必要となることから、謝金・人件費を計上する。3.韓国語を母語とするドイツ語学習者のデータ収集及び分析。データ収集に際しては外国旅費および研究協力者への謝金を計上する。4.国内外で学会発表や意見交換を行い、考察をすすめるため、国内旅費・外国旅費を計上する。5.当該分野に関する新たな文献・資料を調査・収集する。そのための図書資料費を計上する。
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