研究課題/領域番号 |
23520711
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
星井 牧子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90339656)
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研究分担者 |
LIPSKY Angela 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90348194)
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キーワード | 外国語教育 / ドイツ語教育 / 第二言語習得 / 文法習得 / 誤用分析 / 冠詞習得 / 語順習得 |
研究概要 |
1. 調査の概要:本研究では日本語を母語とするドイツ語学習者の文法習得について、語順と冠詞使用の観点から調査を行っている。また、エラーに対するフィードバックの役割も調査の対象としている。 平成24年度は、平成23年度にひきつづき、前年度に収集した作文データ(学習者99名、578テキスト、85,887語)の分析をすすめ、主なエラータイプから、エラーが起きる原因について、以下4つの仮説をたてた。(1)第1言語(日本語)からの干渉、(2)目標言語(ドイツ語)の語彙的・統語的複雑さ、(3)目標言語の口頭表現にみられる複雑さ。これを出発点とし、語順習得に関しては、口頭発話におけるエラータイプと比較するため、作文データの調査対象となった学習者が参加した会話データのトランスクリプトから、分析の基礎とする学習者の発話コーパスを作成した。冠詞習得については、作文データの分析により得られた主なエラータイプを検証するために、学習者の冠詞使用に対する知識をチェックするためのテストを作成し、まず初学者(A1レベル)70名に対して実施した。 2.研究成果(途中経過)の報告:語順および冠詞習得については、日本独文学会春季研究発表会(2012年5月19日・20日、上智大学)で、データに見られるエラータイプと原因の仮説について、研究代表者および研究分担者が共同でブース発表を行い、参加者と議論を行った。 フィードバックについては、研究代表者が作文データへのフィードバックと学習者の理解プロセスについて、研究分担者が口頭発話における自己訂正について、これまでに行った調査・分析結果をそれぞれ論文にまとめた。投稿した論文は査読プロセスを終え、現在、入稿中。平成25年秋にiudicium社から刊行される論集で出版予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、まず前年度の分析結果をもとに学会発表(ブース発表)を行い、参加者との意見交換により,今後の分析に際しての示唆を得た。 冠詞習得については、前年度に得られた分析結果を元に、第一段階として初学者向けのテストを作成し、70名に対し実施し、第2段階として最終年度に行う上級学習者向けのテストの基盤を作成した。 語順習得については、前年度の分析結果について、同様のテーマで調査を行っているベルリン・フンボルト大学の研究グループと意見交換し、今後の調査分析に対するさまざまな示唆を得た。また口頭発話におけるエラーと比較するため、ドイツ語母語話者とおこなわれたテレビ会議5回分(計約400分)のディスカッションを文字化したものから、学習者の発話を抽出し、分析に用いるコーパスを作成し、データを拡充した。この口頭発話データのコーパスは、最終年度に行う分析の基盤となるものである。 フィードバックに関しては、前年度に行った口頭発表を元に、研究代表者じゃフィードバックに対する学習者の理解プロセス、研究分担者は口頭発話における自己訂正について、それぞれ論考をまとめ、日本独文学会から刊行される論集に投稿し、審査の結果、すでに掲載が決まり、入稿済みである。 以上のことから、本研究は現在までおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の分析結果をもとに、さらなる分析と考察をすすめ、日本語を母語とするドイツ語学習者の語順および冠詞習得について、これまでの研究成果をまとめる。 1)冠詞習得については、上級者を対象とするテストを作成・実施し、前年度までの分析結果と比較し、エラータイプに関する仮説を検証し、冠詞習得に関する考察をまとめる。 2)語順習得については、口頭発話データのコーパスを拡充し、分析を行い、前年度までに得られた作文データに関する分析結果と比較する。先行研究で行われてきた語順習得に関する調査結果とも比較し、語順習得についての考察をまとめる。 3)これまでの調査分析結果について、国内外で学会発表および意見交換をおこなう。IDT 2013(2013年7月29日~8月3日、イタリア・ボルツァーノ)の分科会1 Kognition und Spracherwerb での口頭発表、EuroSLA 23(2013年8月28日~31日、オランダ・アムステルダム)でのポスター発表がすでに採択されている他、25. Kongress fuer Fremdsprachenforschung (DGFF, 2013年9月25日~28日、ドイツ・アウグスブルク)でのポスター発表および AILA 2014(2014年8月10日~15日)オーストラリア、ブリスベン)での口頭発表に申し込み中である。 4)上記の国内外での学会発表等の成果をふまえ、調査および分析結果を論文等にまとめ、学会誌・国際誌に投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.学習者を対象とするテストの作成、実施。調査の実施に際しては、データ入力に研究補助者が必要となることから、謝金・人件費を計上する。 2.口頭発話データコーパスの拡充。データコーパスの拡充および分析に際し、研究補助者が必要となることから、謝金・人件費を計上する。 3.国内外で学会発表や意見交換を行い、分析結果についての考察をまとめるため、国内旅費・外国旅費を計上する。 4.当該分野に関する新たな文献・資料を調査・収集する。そのための図書資料費を計上する。
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