研究課題/領域番号 |
23520716
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研究機関 | 金沢学院大学 |
研究代表者 |
横田 秀樹 金沢学院大学, 文学部, 准教授 (50440590)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 形態素習得 / 意味的複雑さ / 転移 / 統語範疇 / 所有格 |
研究概要 |
本研究は、文訂正タスクを用いた文法形態素習得難易度の調査(横田・吉住2010)を発展させるものであり、当該年度の目的は、(1)文法形態素習得の先行研究がこれまでとらえていない「注意が向きやすい形態素項目と向きにくい形態素項目」の詳細(被験者のレベル、文の意味によって違いがあるのか)を文訂正タスクを通して明らかにすることであった。予備実験として行った実験結果(2011年5月実施)は、横田・吉住(2010)の結果とは異なり、タスクの内容(語彙)を変えることで、その順序が異なることがわかった。したがって、注意の向きやすさは文の意味によって変化する可能性があるということが示された。つまりGoldschneider & Dekeyser/G&D(2005)が習得難易度の決定要因の一つとする「Semantic complexity」が関わる可能性が示唆される。 さらに研究を進めるにあたり当該年度では続いて、G&D(2005)が挙げる他の要因の中の「Syntactic category」、およびG&D (2005)が主要因として扱っていないがLuk & Shirai(2009)他が指摘する「転移」との関係を明らかにする実験を行った。調査項目は、転移のおかげで日本人英語学習者には習得が容易だと考えられている所有格の-’s(Luk & Shirai 2009他)に関して行った。結果として、文法形態素習得における所有格-’sに関して、日本語母語話者にとって習得が容易だと結論づけるには問題があり、所有格-’sの習得が容易に見えるのは、表面的な部分、つまり「音」のマッピングをしているだけの可能性が高く、syntaxレベルの習得をしているとは言い切れないことが分かった。つまり、これはG&D (2005)の決定要因の一つSyntactic categoryが大きく影響していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りの調査を行い、結果は予測と異なったが、その主要目的である習得順序の要因の解明に向けてさらに要因を絞り込むことにし、具体的に実験調査を行った。その実験は、先行研究に見られるような習得順序決定要因を一つに限定せず、またG&D(2005)のように複数の先行研究を量的に分析するのではなく、質的データに注目し2つの要因(統語範疇と転移)の関係を調査した。所有格-’sのデータを分析した結果として、どのレベルが「転移」として現れ、どの部分が「統語範疇」の影響を受けるのかデータを示すことができた。特に「注意」という観点から見れば、表面的な音のマッピングのレベルでの「注意」と統語的な暗示的レベルでの「注意」の区別が示唆される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、次に頻度と気づきの関係への示唆を得るため「注意が向きやすい形態素項目」と学校教科書における形態素項目別出現頻度との関係を明らかにする。 具体的には、教科書形態素項目別頻度調査を行い、「注意が向きやすい形態素項目」とインプット頻度の関係を分析する。その後、結果考察および検証・不備等洗い出し、必要に応じ再調査し、データ整理・考察・分析そしてまとめを行い論文にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
・「第一言語と第二言語習得および英語教育」に関する先行研究文献(金沢学院大学)・ (資料・情報収集および成果発表)国内学会(中部地区英語教育学会・J-SLA全国大会・全国英語教育学会)
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