研究課題/領域番号 |
23520724
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
小山 敏子 大阪大谷大学, 文学部, 准教授 (20352974)
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キーワード | 携帯型電子辞書 |
研究概要 |
2年目にあたる今年度は、二種類の研究を行った。一つ目は、2011年度で行った実証研究の内容をさらに発展させたものである。すなわち、メタ認知活動を加えた辞書使用方略指導の定着を、1)辞書学習者の意識、2)検索行動、の運用の両面からより正確に測定することを目指した。 大学学部2回生15名を対象に14週間行われた実験では、読解用のテキストを学習する際、1)積極的に辞書を使うことを奨励し、2)特に多義語が含まれた部分を取り上げ、辞書検索方法を意識的に教授した。その上で、3)参加者が自ら英文テキストのユニットを選び、内容を解説するような活動を行った。同時に、4)自宅学習として、未知語を中心に品詞を含む語彙の定義や用例やイディオムなどを記録するよう指導した。そして、この取り組みの効果を検証するため、実験期間の最初と最後に、多義語が含まれた複数の英文で構成された小テストを各自の電子辞書を使って解答させるとともに、自分がとった辞書検索行動を尋ねる質問紙を配付した。結果として、検索語彙、辞書使用方略の両方に5%水準で有意差が確認された。つまり方略指導後、学習者が主体的に辞書を活用する機会を与えることが効果的であることを示している。 二つ目は、モバイルテクノロジーを代表するスマホのアプリの可能性を「辞書」の視点から調べようとしたものである。実験では、参加者が普段利用している電子辞書と同じコンテンツが入ったスマホ版辞書を使って英文を読むタスクを課した。そして、電子辞書を使った場合と、1)検索時間、2)検索語数、3)1週間後の検索語の再認率、4)学習者の辞書への印象、などの比較を行った。 大学学部生対象の本実験は、現在も進行中であるが、現時点で得られた知見は、スマホ版辞書を使った時のほうが、辞書検索を含めた解答時間は長くかかったが、英語問題の正答率に差は見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2012年度の実践で、辞書使用の方略指導を行った上で学習者が自発的に辞書を活用する環境を設定すると、検索語彙の定着率が向上し、方略の定着も確実になることがわかった。活用方略の定着度を辞書の運用面からはかることができるテストも作成した。また、電子辞書とスマホ版辞書との比較実験も開始することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2012年度の研究デザインをさらに実用化できるようにする。具体的には、1)多義語やイディオムなどを含む単文のPre-、Post-testsの問題を精査して、より辞書運用能力を確実に測ることができるようにする、2)方略定着を測る質問紙の項目も精査し、3)実験参加者の心理的な面をより正確に測定するため、質問紙調査に加え、インタビュー調査も行う。 また、方略訓練に使えるテキスト開発を行う予定である。 加えて、2012年度末から開始したスマホ版辞書と電子辞書の比較実験から得られた知見を、より多くの参加者を募ることで、データの信頼性を増す予定である。 こうした一連の研究結果を学会で公表し、かつ、論文として執筆予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
特に、研究成果公表のための国内外への出張費が必要となる。国外の学会発表では、すでに7月のWorldCALL2013(英国グラスゴー)、8月のAsialex2013(インドネシア・バリ島)、9月のEurocall2013(ポルトガル)での発表申し込みは採択されている。また、11月のGLoALL2013(ベトナム・ダナン)でも発表予定である。国内においては、8月の外国語教育メディア学会(LET)全国大会(本郷・文京学院大学)や大学英語教育学会(JACET)国際大会(京都大学)での発表申し込みも受諾され、発表予定である。 次に、スマホ版辞書との比較実験は個別に行っているため、実験参加者への謝金が必要となる。また、辞書インタフェース検討のための電子辞書、データ分析用のPC、そのための解析ソフト、論文執筆のための先行研究用書籍、テキスト開発のための教材などの購入に費用が必要である。
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