研究課題/領域番号 |
23520727
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研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
曹 美庚 阪南大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (30351985)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 異文化間コミュニケーション / パーソナルスペース / コミュニケーション距離 / タッチング / 非言語行動 / コンフリクト / 日中韓比較 / 相互理解 |
研究概要 |
本研究の目的は、言語活動の補助手段として普遍化されている非言語行動を分析することにより、異文化理解教育に役立つ理論的フレームワークを構築することである。非言語行動の中でも、特に、パーソナル・スペースやタッチング許容度に見られるコミュニケーション距離の分析に重点が置かれている。パーソナル・スペースやタッチング許容度は暗黙知に属するものであるため、異文化間では、コミュニケーション送受信者同士の意図や解釈にズレが起こりやすい。タッチングは他者への原初的な伝達形態として、心の深層に直接的な影響を与えるコミュニケーション手段であるため、異文化適応による内面化までには時間がかかる。本研究では、タッチングのような暗黙知の内面化について、異文化間コミュニケーションにおける文化的特異性ならびに普遍性を明らかにすることに焦点を合わせている。 当該研究の初年度の活動として、広範囲な文献レビューとともに、主としてタッチング許容度に関する国内外におけるインタビュー調査資料の収集が行われた。 パーソナル・スペースやタッチング許容度は、日常レベルではあまり意識されないものの、タッチング場面や状況、タッチング部位や人間関係など、タッチング許容度測定に影響する要因は多い。そこで、タッチング許容度に対する文化的要因を探るためにインタビュー調査を実施した。また、既存の定量的な手持ちデータの解釈においては、「幼少期の経験」に関連する項目の過去想起的調査データの妥当性を検討する必要性が確認された。 なお、 関連学会(異文化コミュニケーション学会第26回2011年度年次大会)において、「若者のパーソナル・スペースに関する日韓比較」のタイトルで、既存の手持ちデータを用いた一次的な解釈について学会発表を行い、有益な意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初平成23年度の研究活動として計画していた、文献研究や既存データの解釈は順調に行われた。また、海外(韓国)での資料調査や、国内関連学会(異文化コミュニケーション学会 )にて中間報告を行うなど、計画の殆どを実施することができた。とりわけ、関連学会での発表では、多くの有益なコメントが得られ、その後の研究に弾みをつけることができた。 しかしながら、中国現地の研究協力者の都合により、もう一つの海外調査として計画していた中国での資料収集は実現できなかった。これが当初の計画達成度においてやや遅れをとっている最も大きな理由である。
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今後の研究の推進方策 |
個人のタッチング許容度は、自らの幼少期のタッチング経験や現在のコミュニケーション相手との関係性が影響していると考えられる。しかしながら、「幼少期の経験」に対する過去想起的調査の場合、過去想起への信憑性が問われることが多い。そこで、本研究のタッチング許容度調査における「幼少期の経験」に対する過去想起的部分への信憑性を高める方策として、被験者のみの調査ではなく、被験者の養育者(母親)への調査を含んだ形での調査デザインに補強する必要がある。 また、これまでの日本や韓国でのインタビュー調査を参考に、調査デザインについても、個人のタッチング許容度に影響しうる因子や文化的要因の抽出が可能な調査デザインに洗練させる必要があると認識している。さらに、日中韓の比較研究を行うためのベースとして、中国における調査が急務である。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に引き続き、国内外(日中韓)でのインタビュー調査を続けるとともに、さらなる定量データの収集の必要性から、研究費の多くは調査旅費と調査協力者への謝金に充てることにしている。 また、当初計画していたもう一つの海外調査である中国での資料収集が、中国現地の研究協力者の都合により実現できなかったため、研究費の一部を次年度に繰り越し、調査費や謝金として使用することにしている。
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