本研究は、映画の同一場面を素材とした難易度の異なる3レベルのeラーニング対応型英語学習教材を開発し、現在多くの大学にて実施されている習熟度別教育やリメディアル教育の効果を上げることを目的としている。開発教材は、動機付けに非常に効果的であるとされる映画を活用し、習熟度・動機付けに大きな差がある大学生の基本的英語運用能力の向上を目指したものであり、著作権法上の制約が少ないパブリックドメイン映画を使用したeラーニング対応型教材とすることで、教室内の学習のみならず教室外での自発的学習に資するものとなっている。 最終年度となる平成25年度には開発教材の試行および第二次評価を行った。まず、本研究のメイン教材となる『ローマの休日』を活用したWBT(Web Based Training)教材に関しては、初級、上級用教材を完成させ、これらを前年度開発済みの中級レベル教材に加えて当初予定していた3レベル対応型WBT教材とした。この教材に関して、上位群、中位群、下位群と異なる習熟度の学習者を対象に調査した結果、ブレンド型授業によるWBT教材の活用は、習熟度の異なる3つの調査群のすべてにおいて、学習者のリスニング力向上に効果的であることが確認され、第一次評価と同様の結果が得られた。 また、発展および継続学習用として別のパブリックドメイン映画である『シャレード』を活用したWBT教材を開発し、『ローマの休日』を活用した教材と同様の手法により検証した結果、WBT教材を完備することにより、学習者の授業外学習時間はWBT教材が用意されていない場合と比べて増加し、また、リスニング力向上の割合も同様に有意な割合で高いことが確かめられた。この結果は『ローマの休日』を扱った上述の研究で得られた結果を基本的に支持しており、映画英語WBT教材の学習効果に関しては一定の評価を与えられることがわかった。
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