研究課題/領域番号 |
23520737
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研究機関 | 函館工業高等専門学校 |
研究代表者 |
奥崎 真理子 函館工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (80233451)
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研究分担者 |
森谷 健二 函館工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90342435)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | respiratory rhythm / Japanese / shallow and rapid / English / deep and prolonged / listening / reading / comprehension |
研究概要 |
本研究は,「浅く速い呼吸リズムが英語の聴解と解読に及ぼす影響」と題し,「呼吸機能に負荷がかかる姿勢で浅く速い呼吸をする英語学習者は,深く長い呼吸リズムを前提に表現される英語の聞き取りと読み取りが正しく行えない」という仮説を検証し,得た知見を基に,英語聴解・読解試験でスコアが伸び悩んでいる日本人英語学習者に, ヨガや腹式呼吸法の新たな視点を加えた英語指導方法を提唱することを目的とする. 平成23年度は本研究を確立させるための予備実験を実施した.函館高専生12名の実験協力者を得たのち,函館高専生命倫理審査委員会で実験の妥当性と安全性が承認された上で,実験協力者の呼吸機能測定,英語解読実験,英語聴解実験を9月から12月まで4回実施した.また,実験協力者12名を統制群6名と実験群6名に分け,実験群6名に1時間のヨガを4回の実験に合わせて実施した.加えて,実験協力者12名は9月と12月にTOEIC@テストを受験し,ヨガによる呼吸機能の向上がTOEIC@スコアの伸長に影響を及ぼしているか調査した. 本研究では,学習者に正しい姿勢と腹式呼吸を意識させる.授業中姿勢を正しく保てない学生が年々増えているという実感は,恐らく多くの教員にある.本研究は「呼吸機能に負荷がかかる姿勢で浅く速い呼吸をする英語学習者は,深く長い呼吸リズムを前提に表現される英語の聞き取りと読み取りが正しく行えない」という仮説を検証することで,英語教員に,学習者の姿勢を矯正させる科学的な根拠をもたらす点で意義がある. 本研究は, TOEIC©テストなどの英語聴解・読解試験でスコアが伸び悩んでいる日本人英語学習者に, ヨガや腹式呼吸法の新たな視点を加えた画期的な英語指導方法を提唱する.生理心理学,精神心理学,ストレスマネージメント教育の見地から英語学習の問題解決を目指す点で重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共同研究者が開発した呼吸計測システムによって,英語聴解時における被験者1名毎の呼吸リズムがグラフによって記録されるようになった.この呼吸計測システムを用いた英語聴解予備実験によって,円背姿勢で浅く速い呼吸リズムを有する被験者のうち,短めの呼吸リズムを崩さずリスニングをする者より,呼吸圧と呼吸間隔を変化させながらリスニングをする者のほうが,TOEIC@リスニングスコアが高いことが分かった.また,深く長い呼吸リズムを有する被験者で,意味のまとまり(チャンク)を予測しpauseに自分の呼吸を合わせようと呼吸リズムを調整する者のTOEIC@リスニングスコアがもっとも高いことが分かった. 英語解読予備実験では,円背姿勢で浅く速い呼吸リズムを有する被験者に,チャンクを細かく区切り,英文を,時間をかけて右から左へ後戻りしながら読む「返り読み」をする傾向が観察された.また,深く長い呼吸リズムを有し黙読時に長めの意味チャンクで英文を区切る被験者の中に,表面上は英語母国語話者のinner voiceを再生するような区切り方をしているが,意味のまとまりを把握する文法力や語彙力が不足しているために,大雑把に英文を区切らざるを得ず,実際には意味チャンクによる英文解読ができていない者がいることが分かった. 実験群の呼吸機能向上を目的として実施した4回のヨガトレーニングは,実験群6名の呼吸機能測定結果に大きな数値の変化が見られなかったことから,回数と時期が妥当ではないとの結論を得た.平成23年度中には,予備実験と実験結果の取りまとめに時間が掛かり,英語学習ストレスと呼吸リズムの先行研究調査は達成できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の実験結果を基に,浅く速い呼吸リズムの学習者に深く長い呼吸リズムを前提に表現される英語の英語聴解・解読を向上させる指導方法として,音声チャンクで正しく区切る英語速音読と,意味チャンクで区切り返り読みをしない英語速黙読を,平成24年度の授業で函館高専3年生160名を対象に指導し,その効果を検証する. 平成23年度呼吸機能測定に使用したスパイロメーターとピークフローメーターのうち,スパイロメーターは大人数の測定には非効率であることから,今後は第一次測定としてピークフロー値を定期的に測定し,集団における浅く速い呼吸リズムを有する学生の割合を導き出す.平成24年度は,先に記した英語の英語聴解・解読を向上させる指導方法の検証に呼吸データも必要になることから,高専3年生160名を中心に実験を展開する.ピークフロー値下位の学生に,スパイロメーターによる第二次測定で絞り込みを行い,浅く速い呼吸リズムを有する実験協力者を12名程度選出する.次に,実験協力者12名を,ヨガと呼吸トレーニング用マスクによる呼吸トレーニングを受ける実験群6名と,トレーニングを受けない統制群6名に分ける.実験群と統制群に1回目の英語聴解・解読実験を行ったのち,実験群には呼吸トレーニングを5週間集中して行い,呼吸機能の変化をスパイロメーターで測定する.5週間の集中トレーニング終了後,2回目の英語聴解実験と解読実験を行い,実験群と統制群の呼吸機能と英語聴解・解読にどのような変化があるかを比較検証する.また,9月のTOEIC@IPテストを受験させ,呼吸機能とTOEIC@スコアに関連があるかを調査する. 平成23年度と24年度の実験結果をまとめた後,英語学習ストレスと呼吸リズムに関連する分野の先行研究者を訪問し,データを提示しながら本研究についての助言を仰ぎ,平成25年度以降の実験方策を導き出す.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の授業で函館高専3年生160名を対象に英語の速音読と速黙読を指導し効果を検証するために,紙代,データ用媒体が2万円程度必要となる. 平成24年度の呼吸機能測定にピークフローメーターを12機購入(5,000円×12=60,000円)し,効率的に4回,函館高専3年生160名のピークフロー値を測定する.測定用マウスピースを160×4回=640個用意して,安全面に配慮する.ピークフロー値が下位の学生に,スパイロメーターによる第二次測定で絞り込みを行う.測定用マウスピースが60個必要となる.よって,マウスピース合計700個(100個2,000円×7=14,000円)を購入する. 浅く速い呼吸リズムを有する実験協力者を12名選出したのち,ヨガとマスクによる呼吸トレーニングを受ける実験群6名と,トレーニングを受けない統制群6名に分ける.呼吸マスク(2万円×6個=12万円)を新規に購入する.実験群と統制群に1回目の英語聴解・解読実験を行ったのち,実験群には呼吸トレーニングを5週間集中して行い,呼吸機能の変化をスパイロメーターで測定する.ヨガトレーナーに講師謝金として1万円×5回=5万円支払う.集中トレーニング終了後,2回目の英語聴解実験と解読実験を行い,実験群と統制群の呼吸機能と英語聴解・解読にどのような変化があるかを比較検証したのち,9月のTOEIC@IPテストを受験させ,呼吸機能とTOEIC@スコアに相関があるかを調査する.TOEIC@IPテスト受験料2,990円×12名分=35,880円必要である. 平成24年度には国際学会1回,国内学会1回,成果発表する.先行研究調査と合わせて,研究責任者と共同研究者2名分の旅費【研究発表2回15万円+先行研究調査2カ所15万円】×2名=60万円必要となる. よって,次年度の研究費の使用計画は,合計金額899,880円となる.
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