研究課題
我々は、本研究に取り組む以前は、前置詞の多義を従来の意味論でしばしば行われるように、Semasiologicalな視点で研究してきた。しかし、その一連の研究で、従来のメタファー・メトニミーによって意味拡張を説明しようとする理論は、(1)意味が際限なく広がることを阻止することはできず、(2)新しい意味の予測が不可能であることがわかった。そこで、意味拡張は、複数の可能性が緊張関係の中に存在した後、それぞれの語の弁別的意味要素により取捨選択されることを通して行われるという見解、つまり、pragmatic strengtheningを中心とした行為理論によって意味「用法」の拡張の可能性を探り、さらに、Onomasiologicalな視点にたち、近似義語の中心義が意味拡張を制限するという立場をとれば、上述の問題は解決されることに気がついた。さらに、その緊張関係の中で、意味拡張の可能性を阻止されたものは、慣用表現としてのみ存在しうるということがわかり、この考えのもとに前置詞の棲み分け研究を行い、一定の成果をあげてきた。具体的には平成25年度の研究においては、英語の前置詞のうち、主にatについて研究をおこなった。24年度のtoの研究においてもそうであったが、atにおいても、人口に膾炙している英和辞典の記述が、atそのものの意味記述ではなく、atの様々な使用場面ごとの日本語訳に終始していることに気がついた。そこで我々は、atそのものの語彙的意味は<特定>でしかないと主張し、辞書に記述されている意味記述は、atの様々な用法を表しているに過ぎないことを指摘した。このような研究成果を学会、論文等で発表し、大学の英語教育の現場においても授業外教材として還元した。
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Hawaii University International Conferences Arts, Humanities and Social Sciences
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