研究概要 |
人工的日英バイリンガル養育を受けた女児による,12歳までの英語の関係詞節を含む発話を分析し次の結果を得た。(1)関係詞節の型はOO型がSO型よりも多かった。全157の発話中,SO型は11例であった。これは,5歳までの主語の位置での関係詞節の発話が極端に少なかったDiessel and Tomasello (2000)と一致している。会話コーパス研究でも主語の位置の関係詞節は少ないという記述もあることから(Biber et al., 1999),女児が受けたインプットにおけるSO型の少なさが,発話数の少なさに影響したと思われる。(2)関係詞の出現は,what,接触節,thatの順序であった。いずれもインプットの影響の大きさを物語っていた。(3)先行詞と関係詞節のみで主節がない発話は少数であった。(4)関係詞節内の主語はIが圧倒的に多かった。(5)先行詞には,whatやthingで終わる単語が多用された。(6)全体的に誤りは4歳から9歳までが多く,9歳では減っているものの,10歳以降も誤りが続いている。誤りは2種類に大別できる。1種類目は,「whatなし」,「whatをthat」,「that過剰」,「what過剰」といった,先行詞および関係代名詞にかかわる語レベルの誤りである。これらは7歳以降に減少している。もう1種類は,「統語」,「再叙代名詞」,「前置詞無し」,「節並置」といった節レベルの誤りで,習得した文をそのまま関係詞節として使用した点で共通している。これらの誤りは7歳以降も続いている。
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