研究課題/領域番号 |
23520755
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
サリバン クリステン 下関市立大学, 経済学部, 講師 (80514132)
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研究分担者 |
コレット ポール 下関市立大学, 経済学部, その他 (30572721)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 外国語教育 / 能力記述 / 自己調整学習 / can-do statements / self-regulated learning |
研究概要 |
本研究には三つの目的がある。一つ目は、自己調整学習能力を育成するために開発された学習進歩表を使用している学習者を対象に、学習者の自己調整学習能力育成を影響すると考えられる要因を調べることである。この目標について、第一研究サイトで学習進歩表を使用している55つのクラスに対し外国語学習に関する学習者の考えを調べるアンケートを実施し、アンケートに答えた数人の学生とインタビューを行った。アンケート調査から判明できたことは、予想したよりも学習者は自己調整学習を行うのに必要だと思われる語学学習に対する考えを持っているものの、その考えを行動に移している学生が少ないということであった。インタビュー調査はそのギャップを説明し、自己調整学習能力育成を大きく影響する要因を明らかにした。インタビュー調査から、学習者の現在と今までの社会的ネットワークは学習者の学習や自己調整学習に対する考えや行動を大きく影響していることが分かった。自己調整学習は学習者自身が一人で行うことだと考えられているが、社会的要素が重要であることを認める結果となった。二つ目は複数の教育現場における学習進歩表の使用を調査することである。この目標について、3件の教育現場の協力を得ることができた。1件について、第一研究サイトで開発された学習進歩表をそのまま使ってもらうことになっている。その他の2件の教育現場について、使用されているカリキュラムや教材は第一研究サイトのものと異なるため、現場の協力者と共に学習進歩表の改作に取り組んだ。三つ目は学習進歩表のモデルや利用指針を開発することである。これについて、インタビュー結果に基づき学習進歩表の改良を行った。また、自己調整学習能力の育成や学習進歩表に対する教員の反応を図るため、ワークショップ型の研究発表を3件行い、そこで分かった自己調整学習に対する教員の疑問や不安に答える論文を書き上げた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に主に3つの調査や活動を計画した。一つ目は第一研究サイトにて学習進歩表を使用している55つのクラスに対し外国語学習に関する学習者の考えを調べるアンケートを実施し、アンケートに答えた数人の学習者とインタビューを行うことであった。この目標は、計画通りに実施ができた。また、分析の結果、予想したよりも、学習者は自己調整学習を行うのに必要だと思われる語学学習に対する考えを持っているものの、その考えを行動に移している学生が少ないこと、自己調整学習能力育成と学習者の社会的ネットワークとの関係が重要であることが判明され、大きな進歩があった。研究結果について学会において発表することまでできたので、この目標に対し大きく達成ができた。学生とのインタビューができたものの、教員を対象にしたインタビューやその他のデータ収集は十分にできなかったので、平成24年度の課題となる。二つ目は学習進歩表を活用してくれる他の教育現場を募集することであった。この目標について、協力してくれる教育現場を三つほど見つけることができ、それらの現場における学習進歩表の実施に向ける準備も予定通りに進展している。一つの現場に関しては平成23年度の10月から学習進歩表の使用が開始された。もう二つの現場については、平成24年度の4月から開始ができるよう準備を計画的に進めた。三つ目は研究結果を国内学会研究発表会にて発表を行い、研究論文を書き上げることであったが、これも達成できた。本研究の最終的目標の一つである学習進歩表のモデルや利用指針を開発することについても、大きな進歩があった。学生インタビューから得たデータを活用し、学習進歩表の改良に取り組んだ。また、自己調整学習能力の育成や学習進歩表に対する教員の反応を図るため、ワークショップ型の研究発表を3件行い、様々な現場の教員の疑問や不安などを聞き、それに答える論本を書き上げた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は主に平成24年度・平成25年度の研究実施計画の通りとなるが、新たに加える調査や活動も予想している。まず、平成23年度に実施したアンケートから重要なデータを得られたものの、今後の研究を進めるにはより細かなデータやデータ分析が必要となるので、まずはこのアンケートを改良し平成24年度・平成25年度にこの改良したアンケートを使用する予定である。学習者とのインタビューは平成23年度通りに行う予定である。第一研究サイトにて学習進歩表を使っている教員に対する情報収集が十分ではないので、教育日記をつけてもらう他、インタビューまたはアンケートなどを実施する必要がある。学習進歩表を活用している補助研究サイト(第一研究サイト以外の教育現場)との深い連携を引き続き取る必要がある。必要な指導や研修を行うとともに、補助サイトへ実際に行きデータ収集を行う他、現場の協力者と共にデータ分析を行う予定である。研究結果を幅広く発表し、フィードバックを得るため、平成24年度に関しては、海外は1件、国内は2件の学会研究発表会にて発表することが既に決まっている。自己調整学習能力と学習者の社会的ネットワークとの関係をさらに調べるため、このテーマに関する研究論文を書き上げる予定である。最終目標の一つであるどのような教育環境にでも簡単に改作し活用できる学習進歩表のモデルや利用指針を開発することについては、引き続き教員や学習者から意見を聞く場を設け、様々な意見を収集するつもりである。平成25年度に研究会を開催する予定であるが、予定通りに開催できるために、平成24年度から準備や参加者呼びかけを開始する必要があると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は研究結果を幅広く発表するために海外と国内の学会発表が決まっているので、その参加に伴う旅費が見込まれている。補助研究サイトでの研修や調査が必要であるため、その活動と関連する旅費が予定されている。平成24年度にも学生インタビューを行う予定であるが、分析を行うため、インタビューの文字おこしが必要不可欠であり、その関係の研究費の使用を予定している。インタビューから得たデータをより効率よくまたは効果的に分析するために定性的データを分析する専用ソフトウエアを購入する予定である。アンケート回答の管理や分析を行うためのスキャナーや関連ソフトウエアの購入も検討されている。学習進歩表の使用に伴う印刷費は予定されている。その他、本研究に協力した者(インタビューに参加した学生やデータ入力を行った者など)への謝礼金の支払いも見込まれている。
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