研究課題/領域番号 |
23520755
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研究機関 | 下関市立大学 |
研究代表者 |
サリバン クリステン 下関市立大学, 経済学部, 講師 (80514132)
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研究分担者 |
コレット ポール 下関市立大学, 経済学部, 特任教員 (30572721)
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キーワード | 外国語教育 / 能力記述 / 自己調整学習 / can-do statements / self-regulated learning |
研究概要 |
本研究には三つの目的がある。 一つ目は、自己調整学習能力を育成するために開発された学習進歩表を使用している学習者を対象に、学習者の自己調整学習能力育成を影響すると考えられる要因を調べることである。この目的については、まず、平成23年度に行ったアンケートやインタビューの分析から特定できた学習者の語学学習に関する考えの背景にある要因について、より細かく、正確に測るためにはアンケート項目を改良し、第一研究サイトと他の教育現場にて改めて実施した。データ入力と分析を終え、考察を行う段階まで進んだ。次に、平成23年度に行ったインタビューの文字おこしが終わり、半分ほどのインタビューの分析を終えた。この分析から学習進歩表のような学習者の自己調整学習能力育成の取り組みにおいて、学習者が肯定的な反応を示す場合は「きっかけ」、「社会的ディスコース」や「共有の理解」という三つの要因があることが分かり、昨年度の「自己調整学習は学習者自身が一人で行うことだと考えられるが、社会的要素が重要である」という結果の解明に近づける研究成果になっている。この結果を中心に国外で2件、国内で2件の研究発表を行い、論文を2件書き上げた。最後に、授業で学習進歩表を実際に使っている教員にもアンケートを実施した。 二つ目の目的は複数の教育現場における学習進歩表の使用を調査することである。結局2件の教育現場で学習進歩表を活用してもらえた。1件についてはそのまま活用してもらえたが、もう1件に関して改作された学習進歩表が使用された。昨年度は後者の学習進歩表の改作の支援や指導、またはデータ収集や入力の面でも支援や指導に多くの時間を注いだ。 三つ目の目的は学習進歩表のモデルや利用指針を開発することである。この目的に関して、平成23・24年のアンケートやインタビュー結果に基づいて学習進歩表の更なる改良をはかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に進展している。 一つ目の目的(自己調整学習能力を育成するために開発された学習進歩表を使用している学習者を対象に、学習者の自己調整学習能力育成を影響すると考えられる要因を調べること)に関して、アンケート項目の改良や実施、またデータ入力ができた。基本的なデータ分析ができたものの、より深い分析(例えばアンケート結果と学習者の英語能力の相関など)や考察をこれから行う予定である。インタビューは半分ほど分析できたものの、残り半分の分析をこれから行う予定。授業で学習進歩表を実際に使っている教員に対しアンケートを実施したもののその分析が残っている。計画通りに国内外合わせて4件の研究発表を行い、また2件の論文を書き上げ、研究成果を十分に公表できたと考えられる。 二つ目の目的(複数の教育現場における学習進歩表の使用を調査すること)に関して、より多くの教育現場で学習進歩表の使用に取り組みたかったが、協力できる学校や教員を見つけることは思ったより困難であった。だが、2件の教育現場から協力が得られ実施ができたので良かったと考えている。データ収集やデータ入力が順調に進み、これからデータ分析を行う。 三つ目の目的(学習進歩表のモデルや利用指針を開発すること)に関して、今年度も学習進歩表の更なる改良ができたものの、利用指針の開発は平成25年度の課題になる。だが、インタビュー分析で得られた情報(特に「共有の理解」について)や教員アンケートの結果が既に収集できているので、利用指針を開発する際に大変参考になると想定され、利用指針の開発作業が順調に進むと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
研究の最後の年度に入るので、推進方策に関してはデータ分析・考察・公表が中心となる。 学習者の語学学習に関する考えを調査しているアンケートに関して、より深い分析(例えばクラスター分析やアンケート結果と学習者の英語能力の相関を調べる分析など)を中心に行う予定である。学習者とのインタビューに関しては、残り半分のインタビューの分析を急ぐ。アンケートは25年度も引き続き実施し、インタビューに関しては必要に応じてさらに実施するかどうか検討する。 研究の第二目的である複数の教育現場における学習進歩表の使用を調査することについて、特に学習進歩表を改作し実施した教育現場に関しては、多くのデータが収集されたので、これからはその協力者と共にデータ分析に励む予定である。 研究成果の公表について、現時点では、国内外合わせて2件の研究発表を行うことが既に決定している。それに、本研究の成果を公表する機会の一つとして、本研究のテーマである「外国語学習における自己調整学習」を題材にする研究会を開く予定である。国内の研究者が中心となると考えられるが、同じ大きなテーマについて研究している同士が集まって勉強することによって、研究成果の公表だけではなく、「語学学習における自己調整学習」への理解を深めることと研究成果へのフィードバックを得る良い機会になると期待している。準備や参加者の呼びかけを既に始めている。 最終目標の一つであるどのような教育現場にでも簡単に改作し活用できる学習進歩表のモデルや利用指針の開発に関して、今まではアンケートやインタビューの結果に基づいて学習進歩表の改良を十分に行ってきたので、来年度は学習進歩表のモデル化と利用指針の開発を中心に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、研究成果の公表や研究成果に対してフィードバックを得ること、研究者ネットワークを築くために研究会を開く予定である。一般募集も行うが国内から2名の研究者に講演をして頂く予定であるので、旅費や宿泊費、謝礼金の出費が見込まれる。研究会の開催に伴い、その他の出費(印刷代など)も見込まれている。また、学会での研究発表や他校の教育現場の協力者との打ち合わせを行うためにも旅費と宿泊費の出費が予定されている。 未定ではあるが、25年度も引き続きインタビューを行う必要が出た場合は、協力者への謝礼金や文字おこしと関連する研究費の使用が考えられる。 書籍の購入や学習進歩表の使用に伴う印刷費を予定している。 学習進歩表のモデルや利用指針の公表に伴う出費(ホームページの設置に伴う費用または印刷に伴う費用)も見込まれている。
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