本研究は、児童の積極的な授業参加や学びに影響を与える教師の意思決定プロセスを探り、教師のいかなる働きかけが児童の学びにつながるかを見極め、本格的に始まる小学校外国語活動に必要な教員研修の充実、教授法・教材開発に貢献することを目的としている。 最終年度である平成25年度は、教師認知に関わる論文を3本出版した。 1.日本に先駆けて精力的に小学校英語教育を推進している台湾において、小学校教員および児童が英語教育をどのように捉えているのか授業観察とインタビューを通して調査した。教師は中学への接続および文法指導が非常に重要であると感じており、児童は、英語は将来役に立つと考えている一方で、綴りをはじめとするスキル中心の授業に困難を感じていることが強くうかがわれた。 2.インタビュー、授業案、授業観察を通して、小学校教員として経験豊富でかつ大学にて第二言語習得に関する理論を学んだ一教員の考えるALTの役割について考察した事例研究である。研究から、教員はALTを英語母語話者としての役割はもちろんのこと、小学校教員と同じ立場の役割、すなわち、児童の理解をみとり、適宜、児童に向けて支援をすることも期待していた。 3.小学校教員を目指す大学生と、英語専攻で児童英語教育に関心のある大学生の、小学校英語教育についての意識を比較したものである。Borg(2006)は、教師認知には自分自身の学習経験、教員養成で得た知識、そして、教育実習を含めた教育経験が影響を与えているとしている。当研究からは、英語専攻の学生は授業運営面で、初等教育学科の学生は英語力・英語指導面で不安を持っている場合が多いことが分かった一方、双方の学生が発音の正しさに不安をもっており、特に発音に関してネイティブ信仰があると推測された。
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