研究課題/領域番号 |
23520760
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
飯野 厚 法政大学, 経済学部, 准教授 (80442169)
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キーワード | シャドーイング / 音読 / スピーキング / 相関 / 長期的 |
研究概要 |
初年度の成果を学会発表の上、論文として公刊を済ませた。その内容は、音読とシャドーイングには弱めの相関があること、音読とスピーキングにはほぼ相関がないこと、シャドーイングとスピーキングには中程度の相関があること、スピーキングにおける流ちょうさとシャドーイングの評価の間に高い相関があることである。 2年目は、研究目的にむけて主に長期的な処遇期間を設けたデータ収集を中心に研究活動を行った。研究目的は以下の2点であった。1.音読+シャドーイング+スピーキングタスク群、スピーキングタスク群の2群を設けた長期的な処遇差によるスピーキング力への効果を検証する。2.スピーキングデータの詳細な分析を行い、正確さ・流ちょうさ・語彙的複雑さ・統語的複雑さとどのような関係を示すのか検証する。 目的の1に関して、シャドーイング力測定(前年度に確立した採点法を採用)、音読力測定(前年度研究により妥当とされた観点によるスコア化)、スピーキングデータ採取(絵を使った内容説明、2分間程度のモノローグを録音)を処遇前後に行った。処遇は実験群(音読+シャドーイング+スピーキングタスク群)と統制群(スピーキングタスク群)を設け、処遇期間をおいて測定した。処遇の内容を準備して実施するのに試行錯誤の時間を要した結果、処遇期間を延長し通年とした。データ処理よりも処遇自体に専念した。結果として、3年目に音声データの評価および書き起こし作業を繰り下げることとした。目的の2の音声データ分析に関しても同様に3年目とした。 本年度は、処遇期間中に英検型のスピーキングテストデータ(音読、絵描写、自由対話)も採取し、下位項目間の関係を探る作業を行った。その結果、音読と自由対話には相関があったが音読と絵描写課題には相関がなかった。また、絵描写と自由対話にも相関がなかった。2年目の課題である発話データの詳細分析が必須である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2年目の研究目的を以下(1)(2)に挙げ、できたこととできなかったことについて説明する。 (1)音読+シャドーイング+スピーキングタスク群、スピーキングタスク群の2群を設けた長期的な処遇差によるスピーキング力への効果を検証する。 できたこと:データ採取。詳細は以下の通りである。音読データ採集に関して、英検2級面接問題および英検準1級英文を抜粋して利用した。シャドーイングデータは2種類の英文を利用し、100語、125語、150語のスピードで音声ファイル化し、カウンターバランスを取りながら協力者の音声録音を行った。スピーキングデータは英検2級、準1級型絵描写により、2分間程度のモノローグを録音してもらった。これらを、処遇前の5月に実施し、処遇後の1月に行うことができた。できなかったこと:予定通りの処遇期間確保とデータ分析。処遇期間は処遇内容の準備や通常授業内容とのバランスを確保するため、処遇実施を隔週化した。それにともなって処遇期間を1年とした。その結果、処遇後のデータ採取が後期の最後となったため、分析がまだ終わっていない。 (2)スピーキングデータの詳細な分析を行い、正確さ・流ちょうさ・語彙的複雑さ・統語的複雑さとどのような関係を示すのか検証する。 できたこと:音読評価、絵描写課題の人的評価、自由対話の評価、および各評価スコア間の相関関係を探ることができた(共時的データの分析にとどまる)。できなかったこと:処遇後の音声データに関する評価や発話スクリプト化、ひいては詳細な分析が終わっていない。学部内役職就任といった外的要因もある。 対応策として、3年目にかけて音声データの評価および書き起こし作業、発話データ分析を行う。
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今後の研究の推進方策 |
(1)処遇前後のスピーキングデータの評価および詳細な分析 詳細分析の観点は正確さ・流ちょうさ・語彙的複雑さ・統語的複雑さとする。分析方法の再検討は時間があれば行う。原則として前年度の方法を踏襲するが、時間要因(自動性測定結果)など新たな指標を加える可能性も残しておく。 (2)前年度の実験を振り返り、発展させた形でタスクを変更したり、習熟度の指標となるデータの幅を広げたりする。できるかぎり小規模な実験をデザインして実施する。 (3)EFL環境における学習者がスピーキング力を高めるにはどうしたらよいのか、という素朴な疑問に対する解答となるようなモデルや学習方法を提言する。 (4)最終的なまとめを発表する。 まとめ案:1)音読の評価方法に関する検証結果、2)シャドーイングの評価に関する検証結果、3)音読とシャドーイングにおける自動性の関係、4)スピーキングのデータ分析の方法と結果のまとめ、5)シャドーイングと音読による発話の自動性の変化とスピーキング力の関係
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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