本年度 (2013年度)の実験: 右利き大学生を被験者にした機能的脳イメージング測定 実験1. Quick response 実験方法:名詞、数字の日本語⇔英語の即時な言語変換をした。クイック・リスポンス(聴覚入力時の言語変換)時に、側頭葉をNIRSで脳血流量を計測。結果:クイック・リスポンスでは、概して、言語野の左脳でなく右脳の賦活が高い。 考察:第一言語処理が優性なのは、左脳であるが、本言語変換では、右脳の賦活が高いことから、母語とは異なった脳内言語処理が示唆できる。 2. 四字複合語を用いた意味内容理解時の黙読 実験方法:漢字、ひらがな、カタカナを用いた。漢字vs.ひらがな vs.カタカナの四字複合語の視覚入力時に、前頭葉をNIRSで脳血流量を計測。結果:漢字<ひらがな=カタカナと順となった。ひらがなとカタカナと、漢字の意味処理時に脳賦活度が低い。考察:前頭葉の思考を司るワーキングメモリでは、日本語であっても、文字表記によって脳の賦活が異なり、漢字黙読時には、情報処理が自動化されるため、日本語特有の興味深い結果を得た。 3. 言語流暢性課題 実験方法:指定文字で始まる単語を出来るだけ多く、頭の中で言う課題を行った。単語産出時の前頭葉・側頭葉の活性度と活性部位同定のために、NIRSで脳血流量を計測。結果:日本語、英語に関わらず、メンタル・レキシコンに多く格納された文字から始まる難易度の低い単語の場合、血流量は低く、検索に時間が掛かった。単語を産出するのが困難な場合、脳の負荷が高いことが判明した。考察:脳の負荷度合は、長期記憶庫の格納語数に依存し、日本語、英語には余り差異がないことから、検索の困難さが言語流暢性課題のカギとなると考える。今後、親密度合が高く、メンタル・レキシコンに多く格納された単語との関わりを綿密に検討し、英語・日本語の親密度合を脳科学的な計測が可能と考えられる。
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