研究課題/領域番号 |
23520768
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研究機関 | 愛知工科大学 |
研究代表者 |
安達 理恵 愛知工科大学, 工学部, 准教授 (70574052)
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キーワード | 外国語活動 / 動機づけ / コミュニケーション / 英語教育 / 小学校 / 異文化間志向 / EFL |
研究概要 |
安達(2012a)では,まずこれまでの研究開発校などで実施された小学校英語教育についての研究を概観した結果、①リスニング、スピーキング、音読などの面で、小学校の英語活動は中学校1年間くらいは一定の効果があると認められる、②だがその効果はそれほど大きくなく、また効果が継続するかは明確でない、③むしろ、中学以降の学習時間や、性別、英語に対する態度などの他の要因が、その後の英語力や動機づけに強い影響を与えていると考えられた。そこで本研究者は、英語活動が増えた3年間に、小学校1校で調査したところ、動機づけはほとんど減少し、Adachi(2013)によると、異文化の相手とのコミュニケーション態度も減少傾向という結果になった。このことから、対象校では外国語活動の増加の効果はあまりなかったと結論づけられた。また,動機づけを予測する要因としては、3年間影響が大きかったものは、学習意識と学習者の周りの人々の励ましであったことから、児童が自信を持ち、達成感の得られる活動であることや、多言語に関心をもつような機会が重要と考えられた。さらに、周りの人の影響はより大きくなったことから、クラスの雰囲気は時間が増えるほど重要になると考えられた。 同様にAdachi(2012b)では、複数の小学校で児童の英語活動に対する動機づけを焦点に、活動時間が増加した前後で比べて分析したところ、動機づけはやや減少し、その一方英語に対する重要性をより認識していたことから、外国語活動を学習として意識しつつあることが示唆された。また、3小学校を集計した動機づけモデルでは、動機づけに直接影響していたのは学習態度であり、それには,身近な人々が影響していた。これらから,児童の英語に対する動機づけを高めるためには,積極的な学習態度を目指し,教師や友達が共に積極的に活動に関わり合える,より良い教室の雰囲気作りが必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで、一次調査分データと二次調査分データの分析はほぼ終え、動機づけおよびコミュニケーション態度とそれに影響する要因の構造的解明は大よそ明らかになってきた。そのため、2012年度は、主にこれまで学会で発表してきた結果について論文を執筆した。また、2012年度に調査・分析を予定していた、「動機づけや外部者とのコミュニケーション意欲態度の男女差について」の結果については、Adachi(2013)において、コミュニケーション意欲態度の男女差を分析し、女子の方が高いとする結果を含めた論文を執筆できた。但し「動機づけの男女差について(差が認められるという結果は発表済み)」の論文執筆および「動機づけと外部者とのコミュニケーション意欲態度の男女差を引き起こす要因について」については、まだ十分な分析が終わっていない。 さらに、当初、各小学校の担当教員にインタビューを行う予定であったが、調査時点から年数が経過し、担当者が替わってしまった学校もあるため、質的調査の実施は難しくなってしまい、この点では課題が残っている。 (参考) 安達 (2012a) 外国語活動時間増加に伴う小学生の動機づけとコミュニケーション態度『中部地区英語教育学会紀要』第41号 pp.125-130. Adachi(2012b). A motivational model in Japanese elementary students' foreign language activities. LET, 49, pp.47-64. Adachi(2013). Pupils' changes in communicative attitudes toward English activities -A case study at a Japanese elementary school. ARELE, 24, pp.221-234.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」で述べたように、当初、研究の応募申請時の目的の一つであった、「担当教員へのインタビューや、外国語活動の見学などを通し、各小学校で実践されている、外国語活動の特徴についての詳細な調査」は、調査当時の担当者の異動などで難しくなっている。そこで、本年度は、これまでの分析結果を、調査にご協力を頂いた学校にはご報告する必要があるため、その際、実際の教育現場では、各小学校の担当者が、今、どのような課題をもっているかについて話を伺うことを考えている。 2011年から外国語活動が必修化し、活動が定着しつつある今、政府の教育再生実行会議による「小学校英語の教科化」が提言された(2013年5月)。そこで、現場の担当者の話を伺うことで、現行の外国語活動の意義と課題をより具体的に把握し、これまでの研究結果とまとめて考察する。さらに、一昨年は台湾の小中学校訪問、昨年は東アジアにおける小学校英語教育のシンポウムに参加し、アジア諸国の小学校英語教育状況もある程度把握できた。これらで得られた知見も含め、これまで実施してきた外国語活動では、どのような意義と課題があるのか、日本というEFL状況において現時点で本当に教科化が妥当と考えられるかも含め検討する。 したがって、最終年度では、①動機づけの男女差についての論文執筆、②動機づけと外部者とのコミュニケーション意欲態度の男女差を引き起こす要因についての分析と論文執筆、さらに③これまでの研究結果を総括し、児童の英語に対する動機づけと異文化に関する態度特性から、今後の小学校外国語活動のあり方について考察した結果を、まず学校ごとにまとめて調査協力校に報告し、④その際に現在の小学校現場での外国語活動についてお話を伺い課題をある程度把握し、⑤最終的には総合的な考察結果を一般向け報告書にもまとめ配布する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究の総合的な成果発表に関わる旅費として、大よそ20万円、担当教員への報告に関わる旅費として10万円。 また英文論文の校正および学会誌掲載費用に関わる費用として5万円。 一般向けのわかりやすい簡易報告書作成・配布に20万円。 その他書籍などの設備備品および消耗品などに5万円。
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