安達(2014b)では,本科研費研究の総括を行った。これまで小学校数校で,外国語活動時間の増加時期に,児童の動機づけや情意的要因はどう変化したかを中心に調査を行ってきた結果,①動機づけやコミュニケーション態度の変化については,児童の関心,熟達願望などの動機づけに関する項目は変わらないか、低下傾向にあった。また②対立関係改善や非言語のコミュニケーションなど異文化の相手とのコミュニケーション態度を調査したところ,やはり低下傾向にあり,外国語活動時間が増すほど,英語学習に対する動機づけや異文化の人に対する積極性を高めるのは難しくなると考えられた。そして③動機づけやコミュニケーション態度に影響を与える要因についても分析を行った結果では,活動時間の増加の前後で比較し共通して影響が大きかったのは,動機づけは,「学習意識」(英語に対する自信,英語学習に対する努力信念などの概念で構成)と学習者の「身近な人々」の励ましであり,「身近な人々」の影響は次第に強くなっていた。また④コミュニケーション態度に影響を与える要因についての分析結果でも,「学習意識」に影響を受けており,3年間調査した学校では3年目に「身近な人々」の影響も受けていた。このことは,活動時間が増えると,児童は,教師や友達などの学習環境に影響をより受けやすくなることを示している。さらに⑤性差について分析したところ,女子の方が,動機づけとコミュニケーション態度ともに高い傾向があった。またこれは,西田・安達・カレイラ松崎(2014)において,他の二人の研究でも同様の結果が示されている。したがって,本研究によると活動時間増加に伴い動機づけの持続が難しくなり,さらに女子に比べて男子はより難しくなることから,拙速な教科化は避け,授業時間が増えてもまた男子でも,動機づけやコミュニケーション態度を維持できる活動の検討が必要と結論づけられた。
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