研究課題/領域番号 |
23520773
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
飯田 毅 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (90290212)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 英語圏留学 / 英語力の推移 / 情意面の変化 / 英語プログラム / メタ言語知識 |
研究概要 |
本研究は留学を義務づけている大学の学科の英語プログラムが学生の英語力と情意面にどのような影響を及ぼすかを事例研究の形で明らかにすることが目的である。近年、留学を義務づけている大学が増えてきたが、その英語教育と学生の英語力の関係は必ずしも明確になっていない。また、今までの研究はどちらかというと留学そのものの成果に注目してきた。本研究では、特に英語プログラムと留学の関係に重点を置き、speaking, writingを含めた英語力や情意面が4年間でどのように変化するのかを調査する。 本研究の対象者である1年次生に対しては、TOEFL ITP, TOEFL iBT、独自のspeaking、writingの試験を実施した。また、speaking の不安、Willingness to Communicate (WTC)、動機等の情意面の調査を実施した。留学終了後1年が経過した4年次生に対しては、TOEFL reading、Writing、メタ言語知識試験を実施した。3年次生に対してはTOEIC、TOEFL reading、writing、メタ言語知識試験に加えて留学前と留学中のbelief等の調査及びインタビューを実施した。1年次の学生の情意面の変化は、4週間の短期留学した学生の情意面の変化と比較を試みた。 1年次の学生の調査結果は現在分析中である。3、4年次の学生の調査結果はそれぞれの入学時のTOEFL、Writing、メタ言語知識と比較し、入学時、留学後、卒業時でそれぞれどのように英語力や情意面が変化しているかが分かった。留学によって英語力が大きく伸びるが、実は留学の形態によって、伸びがそれぞれ異なることがわかった。また、メタ言語知識とreadingの関係は留学後弱まる傾向がある。これらの調査の一部は、次年度の英語教育学会で口頭発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は留学前、留学中、留学後の英語学習及び情意面の変化について事例研究の形でまとめることが狙いである。本来、日本人の英語力を伸ばすためには、小・中学校ではなく、むしろ大学の英語教育の役割が大きい。その意味で、留学を取り入れた英語プログラムがどの程度学生の英語力の発展に寄与し、情意面の変化を促すかという研究は重要な役割を持つ。 その中で、今年度は4年次生の英語力のデータを収集し、分析できた点は評価できる。特に、入学次のwritingの能力が卒業次にどのように変化したのかが明確になった。特に、今まで4年間に渡る長期の研究が少ない点、またメタ言語知識と英語力の関係を調べている点が今までにない研究である。 3年次生に対する英語力及び情意面の変化を質問紙を通して収集できた。質問紙では特に留学前、留学中、留学後の学生の学習量、動機、英語学習に対する学習者のbeliefを調査できた点が成果である。その変化は、「正規科目留学」や「ESLだけの留学」というような留学の形態によって異なる事も分かってきた。 1年次生対する動機、speakingに対する不安、及びWTCの調査も留学前の英語プログラムを評価する点で欠かすことができない研究である。ただ、実施に対して、writingの試験は容易であるが、speakingについてはかなり困難であった。実施を容易にするために、コンピュータを使って実施した。実際、TOEFL iBTはコンピュータに向かって話しかけるので、学生はあまり不安がなかったようである。次年度は人数を絞り、一人一人実施したい。また、speaking力の分析は流暢さばかりでなく正確さにも焦点を当てて分析している点が他に見られない研究である。ただ、分析にやや時間がかかること、3、4年次生に関しては、試験を授業中に実施できない点がが研究上の問題である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の2年目に当たる。昨年度の研究を継続しながら、以下の4つの方針で取り組む。1. 留学前である2年次にTOEIC、speaking 及びwriting試験を実施し、英語力がどのように伸びているかを明らかにする。情意面では、引き続き動機、WTC、speakingの不安の調査を実施する。それらの結果を1年次の結果と比較しながら、どのように変化しているかを調べる。2. 2年次の留学中のspeaking 及びwritingの変化を調べる。speakingについては2ヶ月ごとにAdobe connectを使って調べる。また、writingについては毎月送ってくる学生のレポートの英語を分析する。3. 留学中の学生の学習の様子を観察するために、海外で学生がどのような態度で授業を受けているのかを明らかにする。特に、海外のESLの授業に実際に参加し、学生がどのような心情で授業を受けているのかをインタビューや質問紙を通して調査する。4. 留学前と留学後の学生の英語力及び情意面の変化を調べる。留学後として、留学中の動機、belief調査、TOEIC、TOEFL reading, writing、speaking、writing試験を実施し、学生の情意面や英語力がどのように変化しているのかを明確にする。特に、留学前の英語力や情意面の変化に焦点を当て、どのように変化したのかを明らかにする。5. 留学後の学生の英語力や情意面がどのように変化するのかを定期的に調査していく。多くの学生は留学後、英語力が低下するのではないかと感じているようである。それが本当であるかどうかを英語プログラムとの関係に注目しながら明らかにする。同時に学生の英語接触量を調査する事で、留学前、留学中、留学後の変化が明確になる。それらを研究する事で英語教育プログラムと留学の関係を明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は以下の5項目に渡って使用する予定である。1. 2年次生の留学前や留学中のspeaking 及びwriting試験結果を英語母語話者に評価してもらうために謝礼を支払う必要がある。またWTC、speakingの不安の調査結果については分析するために大量のデータをコンピュータに入力することが必要なためアルバイトに依頼する。speakingの試験に関しては、ビデオ撮りをしたいので、ビデオカメラ、録音機器、テープ等を購入する。2. 留学中のESLプログラムや学生がそれをどのような態度で授業を受けているのか、留学中の情意面変化等を調べるため、現地調査する際の航空運賃、現地旅費及び滞在費に使用する予定である。3. 留学から帰国した3年次に関しては、学生の留学中の動機、belief調査分析のためのデータ入力アルバイト料、TOEIC、TOEFL ITP readingの実施した後の分析のためのデータ入力アルバイト料が必要である。TOEFL iBT(20名分)の受験料及び独自に行うwriting、speaking試験をについては授業中に実施できないため、被験者に対して謝礼を支払う。また、母語話者に評価してもらう必要があるためその謝礼と実施するためアルバイトを雇う必要がある。留学後の学生の情意面の変化のアンケート調査結果の入力のアルバイト料が必要である。4. 留学後の学生の英語力や情意面がどのように変化するのかを定期的に調査していくために研究協力者に対して謝礼及びそれを評価するためのデータ入力費や評価のための母語話者の協力に対する謝礼が必要である。5. 本年度の研究成果についていくつかの学会で発表するための旅費及び宿泊費に使用する予定である。 以上、次年度は、本年度実施したものに加えて、海外出張費及び成果発表に関する費用が加わる。
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