研究課題/領域番号 |
23520773
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
飯田 毅 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (90290212)
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キーワード | 英語圏留学 / listening / speaking / reading / writing / 英語speaking不安 / 動機付け / メタ言語知識 |
研究概要 |
本研究の目的は留学を義務づけている大学の学科の英語プログラムが学生の英語力と情意面にどのような影響を及ぼすかを事例研究の形で明らかにすることにある。本研究は2年目が終了した。当初は、本年度の科研費で留学先の学生の学習状況を把握するための現地調査をする予定であったが、学科の予算で留学先の学生の様子が把握できたので、当初の予算を留学から帰った学生のTOEFL iBTの試験及びSpeaking testに当てた。 英語力の測定のために、TOEIC, TOEFL iBT, Versant、Writing、文法力の試験を実施した。TOEICを使ったデータでは、ListeningとReading力が伸びていることが分かったが、TOEFL iBTを使ったデータでは、留学前と留学後では、Reading以外の3技能(Listening, Speaking, Writing)が伸びていることが分かり、面接を通して、その原因についても調査した。また、Versantという標準テストを使って、入学直後、留学前、留学後それぞれの段階におけるSpeaking力を測定した。Writingに関しては、Writing testを通して入学時、留学前、留学後に分けて調査した。文法力に関しては、文法性判断テストを通して、留学前と留学後の文法力を調査した。 情意面に関しては、動機付け、Speakingの不安、コミュニケーションに対する意欲(WTC)の3項目について質問紙を利用して調査を行った。留学前と留学後のSpeakingの不安と動機付けの変化について調査を行った。また、情意面の3項目に関して英語を集中的に学び、留学を義務づけていない学科の学生との比較、また4週間程度の短期留学の学生対象との比較を試みた。 現在、上記のテストや質問紙のデータを分析がほぼ終了した状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度に引き続きさまざまなテストや質問紙調査を実施してきた。ここでは、英語力と情意面に分けて現在までの達成度を報告する。 英語力に関しては、TOEIC, TOEFL ITP, TOEFL iBT, Writing test、文法判断テスト、Versantのデータを入手し、分析がほぼ終了した段階である。Writing testの分析、Speaking testに関しては分析がまだ途中である。Versant以外の試験については、同じ被験者について留学前と留学後のデータを取得することができたが、Versantに関しては、留学前の1、2年生及び留学後の3、4年生のデータのみでるため、今年度のデータを集めることで、同じ被験者のデータを取得できる。現在、データ分析がほぼ終了し、学会での発表の準備段階であり、どのようなテストでどの程度留学中の英語力が測定できるのか、また、実際にどの程度伸びるのかが明らかになってきた段階である。 情意面に関しては、留学を義務づけていない学科の学生との比較、及び短期留学の学生との比較のデータを収集し、分析がほぼ終了した段階である。また、動機付け、speakingの不安、コミュニケーションに対する意欲に関して、留学を義務づけていない学科の学生及び短期留学の学生の比較を通して、長期の留学を義務づけている学生の情意面の特徴が明らかになってきている。 また、長期の留学を対象とした学生の留学前と留学後における動機付け、speakingの不安に関してもほぼ分析が終了し、その変化の経緯が分かってきた。それに加えて、現在20名程度の学生を選び、面接を実施している。それを通して、情意面の変化の様子が明らかになりつつある。また、情意面の変化に関しても、学会で発表できるように準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究の最終年度に当たるため、次年度の研究を実施すると同時に、今までの研究をまとめ、最終的に報告書を作成するつもりである。特に、今までの研究に新たなものを加えながら以下4つの方針で今後の研究に取り組む。 1. 留学から帰って来た学生に対して、VersantのSpeaking test及びTOEFL iBT test、Writing test、文法試験を実施し、引き続き留学後の学生の英語力変化を明らかにする。必要に応じて、個々の学生に対して個別に面接を行い、留学中の英語学習の実態を把握する。特に、取得した科目と留学先での過ごし方について尋ね、それが英語力にどのように影響を与えているかを明確にしたい。また、どの要因が最終的に留学後の学生の英語力に影響を与えるものかについても明らかにする。 2. 留学から帰って来た学生に対して、情意面の中で、動機付け、Speakingの不安に関して引き続き調査すると同時に、特にコミュニケーションに対する意欲に関して調査することで、留学が情意面に与える影響についてまとめる。特に、それらが留学先でどのように変化するのかを面接を通して明らかにしていく。また、IdentityやStressに関しても調査し、留学後の変化についてもまとめたい。 3. 留学による英語力の変化に関しては、今までの研究をまとめた上に、更に20人程度に面接を実施し、考察を加え、本年9月に開かれる大学英語教育学会(JACET)での発表を通して、研究を深めたい。同様に、情意面に関しては昨年度のデータを基に本年8月に開かれる全国英語教育学会での発表を通して、研究内容を深化させたい。 4. 最終的には、本年度までの研究成果を基に次年度の調査の実施、分析、考察を加えて最終的に報告書にまとめたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本研究の最終年度に当たるため、以下の5項目に関して研究費を使用する予定である。 1. 本年度に引き続き次年度もTOEFL iBTを利用して、英語力を把握する。TOEFL iBTは費用が高額なため、すべての学生に対して実施できない。本年度は18名に実施することができたが、数としては不十分である。そこで、本年度同様それぞれのレベルから学生を選んで実施する。全体で4時間かかる試験を受けてもらうために、TOEFL iBTの受験料と謝礼が必要である。2. 留学前と留学後のSpeaking力の変化を明らかにするために、帰国後の学生に対してSpeakingの試験を実施する。そのため、Versantのテスト費用が必要である。また、実際の留学前のSpeaking力に関して調査を行っているので、留学後のSpeaking力の試験を実施し、その変化について明らかにする。その際、Speaking試験の音声データを文字化するのにアルバイトを雇う必要がある。3. 引き続き文法能力とWriting 試験を実施する。Writingに関しては、採点協力者に対する謝礼及びデータ入力費用が必要である。4. 帰国後の学生に対して、情意面の調査を実施する。引き続き、動機づけ、WTC、Speakingの不安について調査する。加えて、Identity、Stressに関しても調査をする。そのデータの入力費が必要である。5. 研究の成果を発表するために全国英語教育学会等への旅費が必要である。また、最終的に研究報告書を作成する、そのための印刷製本費が必要となる。
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