研究課題/領域番号 |
23520792
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
辻 正博 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (30211379)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 天聖令 / 佚文収集 / 唐令 / 宋代法典 / 中国伝統法 / 史料学 |
研究概要 |
平成23年度は、(1) 散逸した宋代法典の佚文収集、(2)「天聖令」残巻および『宋刑統』『慶元条法事類』条文テキストの電子化・校正、(3)唐代法令(格・式を中心とする)の佚文収集、の3点に重点を置いて研究を行った。 (1)については、特に『宋会要輯稿』に散見される「編勅」「令」「式」を中心に佚文の収集を行い、『続資治通鑑長編』『建炎以来繋年要録』等との対校を併せ行なった。 (2)については、『天一閣蔵明鈔本天聖令校証―附唐令復原研究』上・下冊(中華書局、2006年。以下、『天聖令校証』と略称)所収の天聖令条文を電子テキスト化し、原文のみならず校勘済みのテキストも常時検索が可能なようにした。併せて、『宋刑統』条文の電子テキスト化も行った。なお、『慶元条法事類』所収の勅・令・格・式などの条文については、電子テキストの半分程度について校正作業が完了した。 (3)については、先行研究たる霍存福『唐式輯佚』(社会科学文献出版社、2009 年)所収の唐式佚文の内容について、逐条検討を加えるとともに、敦煌・トルファン出土の法制文献の検討を通じて、仁井田陞『唐令拾遺』(1933年)・池田温(編集代表)『唐令拾遺補』(1997年)に未収録の唐令佚文を収集することができた。 以上の研究作業を通じて、唐代法典と宋代法典のあいだには、(当然予想される)「変化」の部分のみならず、(意外なことに)「不変」の部分が相当程度あることに気がついた。このことは、中国伝統法の本質を探る重要な手がかりになるように思われるので、平成24年度以降に研究を進める上で、十分に留意してゆきたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究計画・方法」欄に記した平成23年度分の概要は、「研究の目的」を効率的に達成できるよう考えて記したものであるが、それに照らし合わせてみて、平成23年度は、ほぼ予定通りに研究を進めることができたと考えている。すなわち、(1) 散逸した宋代法典の佚文収集、(2)「天聖令」残巻および『宋刑統』『慶元条法事類』条文テキストの電子化・校正、(3)唐代法令(格・式を中心とする)の佚文収集、のそれぞれについて、「研究計画」欄に記した内容をおおむね達成することができた。 ただ、資料整理の補助を依頼する予定であった大学院生らがこちらの予想以上に多忙であったため、謝金を利用しての作業を十分に行うことができず、結果として、作業の相当部分を自力で行わざるを得なくなり、当初の予定以上のエフォート(負担)となってしまった。この点を反省し、今後の作業を効率的に進めてゆきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記した通り、平成24年度においては、平成23年度に行った研究の継続、すなわち、唐宋時代の散逸法典資料の佚文収集とその整理が中心となる。 宋代法典については、「天聖令」残巻に関する基本的な資料整理が完了し、また、『宋会要輯稿』中の佚文収集にも目処が付いたので、24年度には、『続資治通鑑長編』『建炎以来繋年要録』および宋人の文集・筆記類からの法典佚文収集を中心に行うとともに、前年度からの継続作業である『慶元条法事類』所収条文の電子テキストの校正作業を完成させたい。 また、唐代法典については、平成23年度に十分に行えなかった海外での資料調査も含めて、敦煌・トルファン出土文献からの資料収集を重点的に行いたい。 また、24年度には、国内外の学会において、研究成果の発表を行う。国内では5月に東京で開催される「第57回国際東方学者会議(ICES)」のセッションにて研究報告を行い、海外では10月に北京で開かれる「第3届"中国古文献と伝統文化"国際学術シンポジウム」にて研究発表を行うことが決定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度収支状況報告書において「次年度使用額」として計上した研究費については、平成24年度分の研究費と併せて、上欄に記した海外での資料調査および研究成果報告のための費用として使用する予定である。また、収集した資料の整理を効率的に行うため、平成24年度については前年度より多めに人件費を計上している(研究計画調書)ので、この方針に従って収集した資料の整理を進め、研究計画を遂行したい。
|