7-13世紀の東アジアの讖(予言)を分析し、讖が日本の皇位継承に果たした役割等を明らかにした。8世紀の立太子か即位には、必ず瑞亀や文字の奇瑞など図讖が出現している。それらが出現する方法と論理からみて、道鏡即位の託宣は図讖だが、道鏡法王就任の契機となった舎利出現は図讖ではない。それゆえ法王を皇位継承者とみることはできない。その後、天皇権威の変化により、8世紀末には図讖の皇位継承に果たす実質的役割は失われる。11世紀以降には、宋皇帝の正当性を示す宝誌和尚讖の影響を受け、石製聖徳太子讖が出現するが、当初は寺院の興隆を目的としていた。13世紀には戦乱・政権交代など再び政治史と結びつく讖が登場する。
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