研究課題/領域番号 |
23520801
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 和夫 東京大学, 史料編さん所, 准教授 (00239881)
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研究分担者 |
木村 直樹 東京大学, 史料編さん所, 助教 (40323662)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 島原の乱 / 日本近世 / 軍制 / 幕藩関係 / 軍役 / 牢人 / 兵站 / 軍功 |
研究概要 |
参戦実人員と戦争遂行システムの把握、諸大名家中での内実と統制の解明、牢人たちの参陣とその後の帰趨の事例発掘、の三つを目的に、「島原の乱と近世的軍制の基礎的研究」初年度の研究を進めた。その概要を摘記する。1.主題関連史料の調査・撮影・収集 (1)島原本光寺・佐賀県立図書館での史料調査・撮影・収集(2011年12月・2012年2月) 島原本光寺では、島原の乱に参陣し新領主高力家に召し抱えられた牢人田島家の文書と、深溝松平家が近世中期以降に収集した島原の乱関係文書を調査・撮影した。 佐賀県立図書館では、同館寄託鍋島文庫を中心に、大兵力で参陣した肥前佐賀藩の関係史料を調査した。 (2)国文学研究資料館所蔵史料の調査 出雲松江(信濃松本から寛永15年の乱後転封)松平家文書の家臣団譜「列士録」を部分的に調査し、島原へ差遣された使者や参陣の武功で取り立てられた牢人の事例を把握した(2011年7月)。2.参陣大名事例等の把握・整理 九州・西日本を中心に自治体史での島原の乱関係の記述を点検・集成し、データベース(稿)を作成した。3.主題関連史料のテキストデータ作成 (1)肥後藩細川忠利関係文書のテキストデータ作成をはじめ、一程分量の試行作業をした(今後拡充を予定)。 (2)当該期の肥後細川藩領における牢人の所在状況を記録した史料を把握することができ、テキストデータ作成に着手した(2012年度中に一次稿完成を予定)。4.史料所在情報や素材の把握 備後徳山藩水野勝成家中諸士が提出した原城攻めの戦功覚書群(写本中に伝存)、鍋島勢附で参陣して軍令違反で処分された長崎奉行榊原職直の関係文書、細川家家老松井家文書等の所在情報等を把握し、一部分析を試行した。さらに調査を進め、テキストデータ作成等を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の採択以前から着手していた膨大な論文・図書・図録類のデータ整理に加え、各種自治体史の記述にも目配りした先行研究の把握・整理を進めることができた。主題に密接に関連し、柱となる史料の所在情報を把握し、所要の調査・収集を実現できつつある。収集し得た史料について、分析を進めつつある。今後の史料調査・収集やテキストデータ蓄積の計画も、立案できつつある。
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今後の研究の推進方策 |
当初来の研究目的である、参戦実人員と戦争遂行システムの把握、諸大名家中での内実と統制の解明、牢人たちの参陣とその後の帰趨の事例発掘を、進める。そのため、一揆鎮圧に最大級の兵員を動員した肥後熊本細川・肥前佐賀鍋島両家やその家中の史料に取り組む。細川・鍋島両家は、参陣規模・家中の構成・史料伝存状況にも鑑み、遂行システム把握と家中の内実・統制の解明に資する重要な事例・素材である。家老単位で参陣した大名諸家の事例・実態と、参陣牢人の帰趨事例の解明・把握とにも努める。牢人の帰趨については、出雲松江松平家等、島原の陣直後に家臣団を拡充した大名家の事例に留意し、調査を実施する。これらを統合して、参戦実人員の把握を期したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
史料評価・一次分析等に時間を要し、読解・翻刻テキストデータ(1次稿)の完成予定が、年度末を超えて2年次中となった史料があり、初年度に予定した謝金を余した。研究・調査の過程で、量が多いことが判明した史料群、専門技術者による取扱いを要件に所蔵者へ特別な利用許可申請をすれば新規撮影が可能となる史料(照会・申請中)、近世期に編まれた写本中に伝わり善本調査が必要な史料が出現したため、初年度に予定した旅費を残した。初年度に使い残した経費は、テキストデータ蓄積・拡張(謝金等)や、史料調査・収集(旅費・写真購入等)で活用する計画である。
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