研究課題/領域番号 |
23520801
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山口 和夫 東京大学, 史料編さん所, 准教授 (00239881)
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研究分担者 |
木村 直樹 東京大学, 史料編さん所, 助教 (40323662)
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キーワード | 近世的軍制 / 島原の乱 / 牢人 / 参陣 / 伝達経路 / 補給 / 戦闘 |
研究概要 |
参戦実人員と戦争遂行システムの把握、諸大名家中での内実と統制の解明、牢人たちの参陣とその後の帰趨の事例発掘、の三つを目的に、「島原の乱と近世的軍制の基礎的研究」2年度の研究を進めた。その概要を摘記する。 1.参戦人員数について、細川・鍋島他大名諸家を中心に史料調査・分析を進め、概数について研究し、その成果の一部を公表した。その際、動員された諸大名家の軍勢に加え、諸藩から派遣され原城攻めに参陣した使者衆や、攻め手諸勢に陣借りして参戦した牢人たちにも目配りし、事例把握に努めた。幕藩領主の興亡とともに派生し、流動的に存在した牢人たちについては、寛永末年のまとまった史料数件を調査し、幕府や大名家からの析出過程、地域での居留生活、「島原の乱」参陣と大名諸家への再仕官、戦後の在方・城下・洛中での滞留等、多様な事例を把握した。肥後熊本藩領内で広域的に実施された牢人改めの史料(永青文庫・細川家史料)については、全文の翻刻データ稿を作成した。京都所司代による洛中での牢人改めについては、京都府立総合資料館・古久保家文書を調査し、史料のデジタル画像データを入手した。 2.軍律と戦功について、肥前佐賀鍋島勝茂・旗本榊原職直の軍令違反と幕府による処分過程、および備後福山水野勝成家中の戦功覚書を対象に、史料分析を進めた。 3.研究発表として、①徳川秀忠・家光の発給文書を分析し、原城攻めに参陣した細川忠利ほかの大名の元服(名字)・官途名決定の様相を論述した。②キリシタン禁制・神仏習合・政教未分離の近世日本の宗教秩序について考察を加え、研究会で口頭報告した。③元幕臣で上方に居住し、幕府・九州諸藩間の政治的回路として機能した特徴的な人物について研究し、論稿にまとめた(掲載誌の発行は平成25(2013)年度)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査先の一つで、熊本藩主細川家・同藩家老松井家等の史料を多数所蔵する熊本大学附属図書館が、耐震補強工事により1年強(約15ヵ月間)の予定で閲覧利用を中断したことが、影響した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25(2013)年秋に予定されている熊本大学附属図書館(24年夏以降耐震補強工事のため史料閲覧利用を中断中)の利用再開を待ち、他機関所蔵分も含めて、主題関連史料の閲覧・調査と分析、翻刻テキストデータの校正・拡充等を進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
使者衆・牢人衆の事例と実態、攻城戦参戦者の戦功覚書、兵力動員・物資補給等、主題に関連し各地に伝存する史料の調査と分析を進め、主要史料については翻刻テキストデータも作成・拡充したい。
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