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2012 年度 実施状況報告書

兵農分離制下における身分的中間層に関する基礎的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23520802
研究機関東京外国語大学

研究代表者

吉田 ゆり子  東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (50196888)

キーワード侍 / 兵農分離 / 身分 / 牢人 / 郷士 / 土豪 / 系図 / 帯刀
研究概要

2012年度は、信濃国下伊那地域における16世紀末から17世紀前期に至る政治史を確認し、在地社会における兵農分離を考察するための知見を深めることができた。その成果は、飯田市歴史研究所編『飯田・上飯田の歴史』上巻にまとめることができた。また、坂西氏や小笠原氏の動向と飯田城の形成過程を検討し、南信濃地域における飯田城の政治的位置を確認することができた。また、山城国相楽郡北笠置村森嶋家の百姓化と近世における地域社会との関わりを考察した。以上の研究により得られた成果は、下記の3点である。
1.信濃国下伊那地域の土豪クラスの家の兵農分離の姿はこれまでも検討してきたが、その動きをもたらした政治史的背景の検討が不十分であった。そこで、今年度は南信濃地域を支配した国人と中央政権奪取をめざす、武田、織田、豊臣、徳川諸政権の移動と南信州地域との関わりをおさえた。
2.南信濃地域は、政治的には中央の動向とは距離を置いた存在とみられてきたが、実際には武田父子の動向にともない、織田信長も武田氏征伐のために重要な経路と認識していたことが明らかになった。また、それにともなって、在地の土豪クラスの家々も政治的に翻弄され、「武士を稼ぐ」家に着目することで、兵農分離の具体相が明らかになること、その歴史的背景をもつが故に、近世においても中央の政治・経済からは距離を起きながらも、武士化志向の強さをみることができた。
3.山城国笠置村の森島家は、畿内・近国にあるため、大坂の陣まで武士としての奉公を確認することができる。その後、藤堂藩にて「無足人」となるものの、武士化志向は捨てず、明治維新を機に士族編入を試みる。
こうした「武士化志向」の一般性、あるいは戦国期の歴史的背景、ないし地域性などの諸要素を組み込み、最終的に考察をまとめることが必要と認識した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

信濃国関連の史料分析に力を割き、山城国についても分析をすすめているものの、甲斐国の井尻家・依田家の分析が遅れている。
2012年度は、本務校の特別研修制度を活用し、長野県飯田市歴史研究所における研究推進に力を入れたため、国文学研究資料館での史料収集が遅れたためである。

今後の研究の推進方策

1.山城国の郷士、牢人にかかわる史料分析をすすめる。
2.甲斐国井尻家の史料分析を鋭意すすめる。井尻家の分析は、これまで検討した対象とは異なり、幕府直轄領における「牢人」への幕府の政策であり、かつ地域社会との関係を明らかにすることができる。これを素材として、幕府による郷士・牢人への対処方針をしることができると考える。
3.信濃・山城・甲斐諸地域の事例をもとに、兵農分離体制下における郷士・牢人の意識と地域社会との関係に関する論考をまとめる。
身分的中間層に着目した研究を在地に則してまとめることを今年度の課題とするが、他方で中間層の意識を分析するために、学問・知識受容のあり方をさぐるために、17世紀段階の儒学者を中心とした思惟様式の検討も行う。

次年度の研究費の使用計画

1.これまで収集した史資料情報の整理を謝金を用いながら行う。そのために、デジタルデータの整理に対応する処理能力の高いPCなどの機器を購入する。
2.論考執筆に不足な史料の収集のために、出張旅費、写真撮影による史料調査・収集を行う。
3.機材として、軽量なコンパクトデジタルカメラを用意し、機動的な史料収集を試みる。
本年は、本研究課題最終年度にあたるため、これまで申請者がすすめてきた研究と、新たに甲斐国の分析を加味した論考をまとめる。そして、今後の研究へとすすめるために、最終年度ではあるが、収集した史料・画像の整理と、補足的な文献収集を行うために、謝金の使用と機器の購入を行うことにする。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2013 2012

すべて 図書 (3件)

  • [図書] 『画像史料論』2013

    • 著者名/発表者名
      吉田ゆり子他編
    • 総ページ数
      300
    • 出版者
      東京外国語大学出版会
  • [図書] 『身分的周縁と地域社会』2013

    • 著者名/発表者名
      塚田孝他編
    • 総ページ数
      300頁
    • 出版者
      山川出版社
  • [図書] 『飯田・上飯田の歴史』上巻2012

    • 著者名/発表者名
      飯田市歴史研究所
    • 総ページ数
      355頁
    • 出版者
      飯田市歴史研究所

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公開日: 2014-07-24  

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