身分的中間層の史料群として、信濃国下伊那郡下瀬村上松家文書を分析することにより、慶安年間から材木の筏問屋として地域の分業体系に位置付いていた家の実態をみることができた。必ずしも武士の由緒だけが地域でのステータスを表象するものではなく、実質的な経済活動のもとで、土豪層が近世前期から活動していたことが知られ、一つのモデルとして位置づけることができた。また、本研究の素材として『熊谷家伝記』を全面的に翻刻する作業を予定していたが、膨大な家伝記の翻刻と分析には、最終年度である本研究では実施することが困難であると判断し、中間層の家についての分析を、甲斐国の依田家や信濃国部奈家、千葉家、宮下家という家について分析することにとどめた。
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