研究課題/領域番号 |
23520806
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
加藤 千香子 横浜国立大学, 教育人間科学部, 教授 (40202014)
|
キーワード | 在日朝鮮人 / 戦後復興 / 北朝鮮帰国事業 |
研究概要 |
「戦後復興」と都市社会という本科研のテーマに即して、本年度においては、「戦後復興」期とされる1950年代における「包摂と排除」の問題に焦点をあてて研究を行った。サンフランシスコ講和条約発効後に「日本」の領域が再確定されていくなかで、マイノリティがどのように位置づけられていくか、「包摂と排除」という視点でとらえることを重視した。 特に、本年度において力を入れたのは、在日朝鮮人をめぐる「包摂と排除」の動きである。講和発効後における日本社会と在日朝鮮人との関係について調査を進めるなかで、とりわけ大きなターニングポイントとして見出したのは、1959年にはじまる在日朝鮮人の北朝鮮帰国事業である。 この在日朝鮮人帰国事業についてはすでに研究が進められているが、本プロジェクトでは、日本赤十字や日本政府のみならず、「復興」を課題とした当時の日本社会の願望でもあったととらえ、在日朝鮮人の日本からの国外追放を意味する「帰国事業」に協力していく日本社会の論理を明らかにすることとし、調査を開始した。日本人によってつくられ広がった「帰国協力会」の動き、全国各地の自治体における帰国協力運動の様相 についての調査を進め、その「国民運動」とも見られるような運動の広がりや、それを支えた論理に着目し、当該期の「復興」という課題と在日朝鮮人の帰国事業との密接な関係についての一端を明らかにしている。なかでも神奈川県や横浜市・川崎市での具体的な展開については、資料を通して検証を加えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「戦後復興」期とされる1950年代の日本社会の様相と、1959年に開始される北朝鮮「帰国事業」の展開過程について、旧植民地出身者―特に在日朝鮮人に対する「包摂と排除」という視点から研究を行い、全国的な動向と共に、神奈川県内の都市を対象とした検証を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度における「北朝鮮帰国事業」にかかわる研究で得られた知見をもとにしながら、さらに以下の点に力を入れていくこととする。 第一は、日本人の帰国協力運動について、さらに継続してその実態を明らかにしていくことである。帰国協力会にかかわった人物の調査とともに、都市で展開された運動や動向については、神奈川県内の都市のみならず、全国他都市を対象とした調査・検証を進めていく。 第二に、視野を広げて、こうした旧植民地出身者の「帰国」政策が、第二次世界大戦後の国際社会においてどのように位置づくことになるのか、戦後の諸外国における植民地出身者への処遇についても調査を行い、それらと関連づけたり比較したりしながら、戦後日本の「帰国」政策やそれを積極的に支持する日本社会の風潮の特徴を浮かび上がらせていきたい。 上記の調査をふまえ総合的に、日本の「戦後復興」期における「包摂と排除」の問題を、国内社会の動向および国際的観点から考察していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
|