研究課題/領域番号 |
23520810
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高木 博志 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30202146)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 神仏分離 / 皇室 / 泉涌寺 / 仏教 / 古社寺 |
研究概要 |
1871年の皇室の神仏分離以降においても東京の皇居においても皇后・皇族・女官たちが私的領域において仏教の信仰を持ち続けていた問題の解明に取りくんだ。とりわけ1895年に皇太子明宮が危篤になったおり、泉涌寺で不動明王と閻魔天の祈祷をおこない、東京の宮中でも病気平癒の祈祷をおこなったことや、念持仏を皇太后・皇后をはじめ東京の皇居で持ち続けたことの解明は、神仏分離後の皇室の信仰のありようについて、従来のイメージとは大きく違うイメージが提出できた。調査先は、泉涌寺には年間10回以上の調査をおこない、2011年6月23日には泉涌寺で「明治維新と泉涌寺――皇室の神仏分離・再考」(第48回真言宗布教連盟青年教師布教研修会)の講演をおこない、宗門の方々と研究交流をしている。そのほか、京都周辺社寺と皇室との関わりが明治維新を通じてどう変容するか、の課題については、豊国神社、石清水八幡宮、京都府立総合資料館などを、調査先として取り組んでいる。また当初の皇室の神仏分離の問題だけでなく、幕末の黒住教の朝廷に対する布教やその信仰実態の解明にもとりくんだ。さらに当初予定になかった実績として、2012年3月15日に研究報告として、The Buddhist faith of Japanese Imperial family after the Meiji Restoration(パネル"Kyoto’s Modern Revolution"AAS、於トロント)をおこない、研究の意義を国際学会でアピールし、欧米の研究者と研究交流をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
泉涌寺への調査は順調に毎月1回のペースですすめ、デジカメ撮影した大量の紙焼きを作成した。それらを徐々に解読している。当初予定になかったカナダのAAS(アジアアフリカ学会)で皇室の神仏分離の報告を行って欧米の研究者と意見交換したが、その一方で宮内庁書陵部ほかへの東京での調査がとどこおった。しかし豊国社、石清水八幡宮、宗忠神社など京都周辺神社への調査は順調に進んでおり、それらと朝廷との関係と明治維新での変容について研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
明治維新後の皇室の神仏分離の実態について、皇室内部と京都周辺社寺の変化を通して考察する。前年度に引き続き、年間10回以上の泉涌寺への史料調査と、周辺社寺(春日社、豊国神社、東寺など)への調査を進める。また宮内庁書陵部や国立公文書館への調査もおこなう。幕末朝廷への布教の解明のため、黒住教の調査もおこなう。また神仏分離後の社寺の近代のありようとして20世紀のツーリズムの問題にも研究を進めたい。なおほぼ平成23年度の受領額を使った。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き泉涌寺をはじめとする京都周辺社寺での写真撮影とその成果として大量の紙焼きの費用を計上する。宮内庁書陵部、国立公文書館、国会図書館などを対象とする、東京への2~3回の調査出張費、岡山や伊勢への出張旅費を予定する。宗教史や皇室に関わる資料や研究書のほかに、一枚物の維新期の社寺や京都にかかわる絵図や古書を購入する。
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