研究課題/領域番号 |
23520810
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高木 博志 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30202146)
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キーワード | 泉涌寺 / 神仏分離 / 古都 / 帝都 / 文化財 |
研究概要 |
泉涌寺にのべ12回の調査をおこない、幕末から大正期までの史料の調査をし分析した。皇室の神仏分離については、1880年代以降も東京の皇族や皇后・女官が仏教への信仰をもっていたことについて、念持仏の所持や、病気の折などの祈祷など、具体的なありようが明らかになってきている。諸史料の分析を進めるとともに、京都における泉涌寺の位置づけ、泉涌寺山内の山階宮・桂宮などの皇族墓地の成立についても考察をおこなった。 宮内公文書館や国立公文書館にも調査をおこない、お黒戸や宮の東京遷都後の生活様式や皇居の空間の整備に関わる史料を調査した。 平成24年度には、京都大学人文科学研究所の共同研究「近代古都研究」の成果報告として、高木博志編『近代日本の歴史都市―古都と城下町』(思文閣出版、近刊)の編集に努め、京都御苑の空間変容や、南都の社寺資料の公開と地誌編纂、神仏分離後の伊勢神宮、社寺上知後の森林施業など、近代の皇室や社寺の動向にかかわる諸論文を編んだ。そのなかで高木は、古都奈良・京都・神都伊勢をまわる奈良女子高等師範学校の修学旅行をとりあげ、近代の皇室と関わった歴史都市や社寺の問題を考察した。 帝都東京における皇室の信仰や生活様式に関する調査のため、箱根や葉山にも調査をおこなった。そのほか、神仏分離後の社寺と文化財のありようは重要な課題であるが、「現地保存の歴史と課題―地域の文化財は地域のもの」(『日本史研究』602号、2012年10月号)著して、明治維新後に文化財が地方から中央へ集中する歴史を考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
泉涌寺での定期的な調査をおこなうとともに、東京で宮内公文書館や国立公文書館で調査をすすめて、多様な史料の調査とデータの集積ができたため。またあらたに帝都東京における皇室を中心とする宗教や文化をめぐる秩序が形成されることの解明に研究の焦点が定まり、論文化できるめどがついたため。さらに近代日本の歴史都市の「歴史性」が皇室と密接に関わることを論証する共同研究の編集をおし進めたことも評価の理由である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き泉涌寺や、奈良(春日大社)・京都(泉涌寺・石清水八幡宮など)の社寺での調査を進めるとともに、東京に出張して東京遷都後の東京における皇室の宗教や文化について調査をおしすすめる。 『岩波講座日本歴史』に、近代天皇制と伝統文化に関わる論考を書き、第一次世界大戦の共同研究(岩波書店)に、大戦後の史蹟名勝天然記念物保存にかかわる論考を著し、『講座明治維新』11巻(有志舎)に明治維新期の宗教と文化に関わる論考をまとめる。 皇室の神仏分離後も、東京の皇室の私的な領域で仏教信仰が残ったことを、国家神道の枠組みのなかに位置づけられるように研究をまとめたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
東京に3度は宮内公文書館、国立国会図書館憲政資料室、東京大学史料編纂所などの調査に出張したい。 社寺や宮内公文書館で撮影したデータを紙媒体に出力し、大量の史料を集積したい。また研究課題に関わる図書類を購入する。
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