研究課題/領域番号 |
23520816
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
田中 誠二 山口大学, 人文学部, 教授 (80116730)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 萩藩 / 和市 / 藩財政 / 藩札 |
研究概要 |
研究課題「近世後期~幕末期の和市変動と萩藩財政の研究」の解明のために、当該年度に実施した研究の成果は、以下の通りである。1.益田家文書(東大史料編纂所所蔵・寄託)の藩財政に関わる史料を博捜し、重要史料の釈文を作成し、分析を行った。主要なものは原本照合を行った。2.山口県文書館所蔵・寄託の毛利家文庫・松原家文書・讃井家文書、萩博物館所蔵の杉家文書の史料調査を行い、藩財政に関わる重要史料をマイクロカメラで撮影し、現像・焼き付けを行った。そのなかから重要度の高いものの釈文を作成し、分析を行った。3.萩・山口藩の幕末・維新期の藩財政研究、とりわけ維新期のそれの手薄なのに鑑み、「維新期山口藩財政研究序説」を執筆して公表し(やまぐち学の構築8号)、この主題に関する一定の見通しを得た。その成果は、A従来藩札の発行量と時期が不明確だったのに対し、天保初年の大増刷1万5000貫目、安政5年~元治1年の大増刷2万5000貫目、戊辰戦争期出札13万貫目であり、特別会計や豪農商を利用して戦費を調達したことを解明したこと、B藩札償還の具体相を和市変動を手掛かりに解明したこと、C明治初年の銀目廃止(金直し)を利用して大坂借銀を大幅に減額した具体相を解明したこと、D藩債償還の経過を、借銀額・政府からの金札貸与・戦費との関連・和市変動との関連・貸し銀取立との関連、削除債の割合・版籍奉還や廃藩置県の影響、などの諸側面から解明したこと、である。全体として和市変動に注目することで、これまで手薄であった幕末・維新期の財政史研究を進める成果を一定度挙げたと思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「幕末期萩藩財政史研究序説」(『やまぐち学の構築』第7号、1~25頁、2011年)を前倒しで発表でき、今年度には「維新期山口藩財政史研究序説」(『同』第8号、1~33頁、2012年)を発表できたので、幕末~維新期の藩財政についての一定の見通しを得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
東大史料編纂所所蔵・寄託の「益田家文書」については、科学研究費による共同研究の成果として電子版写真を入手できたので、これの検索・コピー・釈文作成に努めたい。また、山口県文書館・萩博物館の史料調査を行い、マイクロカメラによる撮影、現像・焼き付けをし、重要文書の釈文作成を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度東京大学史料編纂所共同利用・共同研究拠点共同研究員に採用されたため、益田家文書の原本照合の機会に恵まれ、旅費の支給をうけた。そのため予算の余りが若干でた。来年度は地元の史料調査に集中し、マイクロカメラによる撮影・現像・焼き付けに経費を使用したい。
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